もしも土方歳三が中小企業の副社長だったら・・・半分無料公開中!

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もしも土方歳三が中小企業の副社長だったら・・・


まえがき

もしも新選組が現代にいたら、どのように生きていただろう?
大企業や官僚組織の中では、その能力をフルに発揮することはできない。小さな町工場でなら、彼らは思う存分生きられるのではないか?
土方歳三は「鬼の副社長」として腕を振るうのではないか?

東京都国立市にある中小企業、新鋭精機株式会社は、電子部品メーカーだ。
大手自動車メーカー北斗自動車の系列下請けで、苦しい経営を続けながらも、技術の優秀さでは定評があった。
ところが、北斗自動車がブレーキ事故を続発して経営危機に陥った。
北斗自動車は系列企業を整理し始め、新鋭精機も取引が激減した。それを知った銀行は、融資を引き揚げると言い出す。
倒産目前、副社長の歳三が、大勝負に出た。
新鋭精機は、倒産の危機を乗り越えられるか?!


目次

副社長は仕事の鬼
落ちこぼれ軍団
親会社の大チョンボで大ピンチ
新製品を開発しろ
ロボットカー・レベル4
システムが盗まれた
ネバーギブアップ
信義を貫け
ピンチはチャンス
新しい協力者
夢は現実になる
やはり、副社長は鬼だった


副社長は仕事の鬼

営業部の若手、藤堂平助は始業1時間前に出社した。
昨日、やり残した仕事を仕上げねばならない。今朝一番で、大得意先のアオイ電子株式会社でプレゼンテーションをする予定だ。
初夏の空は、早朝から青く輝き、急いで歩くと、全身が汗ばんでくる。

営業部の部屋に飛び込んで、平助は目を丸くした。
平助のパソコンを副社長の土方歳三が見ている。
「ああ、おはようございます」と、平助が言うより早く、歳三の鋭い声が突き刺さる。
「藤堂君、今朝のプレゼンテーションの準備はどうした?」
「あの・・・今から仕上げるつもりで・・・早く来たんですけど・・・」
「なぜ、昨日のうちに仕上げない?ミスが見つかったら、どうするつもりだ?やり直す暇はないぞ。今朝は、確認するだけにしておくべきだ」
大きな目が真冬の月のように冷たい。声は氷原を渡る風だ。イケメン男優を束にしても敵わない美貌だが、表情というものが全くない。

平助は「すみません」と小声で謝り、すぐにパソコンを打ち始めた。
(全くイヤになっちゃうよなあ。副社長ときたら、朝は一番に出社して、夜は最後に退社する。家には寝に帰るだけらしい。一日のほとんどを会社で仕事をしている。だから、三十半ばになっても独身でいるんだ)
平助は、内心ぼやいた。

プレゼンテーションの準備は、思いのほかに手間取った。小さなミスがいくつか見つかったのだ。
(副社長はミスに気づいたから、怒ったんだ)
冷や汗をかきながらもミスを訂正し、なんとかプレゼンテーションを無事に済ませた。

昼飯は、いつものラーメン屋だ。
先輩営業マンの永倉新八と工場主任の原田左之助がいっしょである。平助は、ついグチをこぼした。副社長の仕事熱心には、とてもついていけない。
左之助がにやにやした。
「気にすることはないぜ。土方さんは『仕事の鬼』なのさ。朝から晩まで、仕事、仕事。あんな生活、俺は三日ともたないね」
「土方さんは、どんな小さなミスも許さない。製造でも営業でも、うっかりミスをすれば、土方さんの雷が落ちる。それも、どなりつけたりしない。錐(きり)で刺すように理詰めで怒る。たまらないよ」
新八が顔をしかめた。昨日も、歳三から冷ややかにミスを指摘された。
「土方さんは、俺達に厳しいだけじゃない。自分には、もっと厳しい。俺は、入社して十五年近くになるが、あの人がミスをしたのを見たことがない」
新八がため息をつくと、平助はラーメンが喉を通らなくなった。
「ミスをしない上司なんて、完璧すぎて最悪ですよ」

左之助は大盛りラーメンの替え玉を頼んで、
「今でこそ『仕事の鬼』って顔をしているけどな、高校の頃は暴走族の頭やってたんだ。日野から府中にかけて知らない者はいないバラガキだった」
「喧嘩が強くてさ、どの暴走族も土方さんには手が出せなかったな」
新八が昔を思い出して苦笑する。

左之助と新八は歳三と同年輩で、府中の高校ではかなりワルだったから、日野の高校に通っていた歳三の噂をよく知っていた。
歳三は大喧嘩をして高校を退学させられ、大検(大学入学資格検定)試験を受けて三流私立大の法学部に入った。この法学部は、司法試験合格率は0である。


落ちこぼれ軍団

「俺も新八も落ちこぼれさ。俺は高校中退だし、新八は大学進学したのに、途中で止めちまった。当然、まともな就職先がない。近藤社長が拾ってくれなきゃ、今でもバイトで食いつないでいるだろうな」
「土方さんも同じだよ。あの人は近藤社長の幼馴染(おさななじみ)でね、コンビニだのファミレスだのを渡り歩いているところを、社長に誘われたんだ」
「先代社長が亡くなったばかりで、会社も苦しい時だったらしい。新規に社員なんか雇う余裕なんてなかったのに、社長は土方さんを放っておけなかった。近藤社長ってのは、そういう人なのさ」
「だから、土方さんは『仕事の鬼』になった。独学で経理を勉強して、会社の財政を立て直した。銀行から山南さんが来て経理部長になるまで、土方さんが経理も見ていたんだ」
左之助と新八が交互に語るのを、平助は黙々と聞いていた。
平助は有名大学を出ていたが、就職試験にことごとく失敗した。採用してくれたのは、社長面接だけで決める新鋭精機一社だった。
まだ入社二年目だが、けっこう大きな仕事をさせてくれるのが、うれしい。

「社長は、いい製品を作ることしか頭にない。今じゃ、人事も営業も経営も、副社長の土方さん任せだ」
新八が言うと、左之助がうなずいた。
「土方さんに任せておけば、心配ないのさ」

新鋭精機株式会社は国立市にある小さな電子部品メーカーである。
工場のパートを入れても四十人に満たない。しかし、北斗自動車の100%子会社、アオイ電子の傘下企業の中でも、技術の高さと品質の良さでは定評がある。

社長の近藤勇は、まだ四十歳にもならない。三流私立大学の工学部の出身だが、父親から受け継いだ技術や人脈を大事にしていた。
近藤は、仕事にあぶれてすさんでいく若者を放っておけなかった。少しでも見どころがあると思えば、自分から声をかけて入社させた。
工場で働く若者の中には、少年院や刑務所にいた者も少なくない。仕事はきついが、近藤の鷹揚(おうよう)な人柄に魅かれるのか、熱心によく働く。町工場にしては、従業員の定着率が高かった。

工場長兼技術部長の斎藤一は中途採用で、出身大学も職歴もはっきりしない。
だが、その技術力と知識は超一流と言える。斎藤が工場長に就任してから、製品の品質が一段と上がり、安定するようになった。

新鋭精機には開発研究部がある。
部員はただ一人、二十一歳の開発部長、沖田総司だけだ。
総司は正真正銘の天才少年だった
IQ186で、IQ173のアインシュタインより高い。ただし、知能が高すぎるため、同年齢の子供達とうまく交われない。
登校拒否になり、中学校はほとんど出席しなかった。

総司の生家は、近藤や土方の家の近所だった。
先代社長は総司の天才を見抜き、幼い時から工場で遊ばせた。
総司は、十五歳で数学と原子物理学の博士号を取得した。それも海外の専門誌に発表した論文である。
翌年、アメリカの大学に招かれて留学し、三年後、電子工学の博士号を取得して帰国した。だが、日本における学歴がないため、就職先がない。
総司は近藤勇に誘われるまま新鋭精機に入り、気ままに研究を続けている。


親会社の大チョンボで大ピンチ

北斗自動車は、トヨタや日産と並ぶ自動車メーカーで、アメリカ西海岸から中南米、東南アジアにシェアを拡大していた。
ところが、年明けから、北斗自動車のブレーキ事故が続発した。
北斗自動車は事故原因を究明して発表したが、その発表データは改ざんされたものだった。データの改ざんが発覚すると、北斗自動車はピンチに陥った。
謝罪会見を開き、リコールを行い、事故の損害賠償に応じた。
販売台数は70%減と大幅に落ちた。日本各地の工場を閉鎖し、大規模なリストラを断行した。系列会社には大幅なコストダウンを強制した。
新鋭精機もアオイ電子から15%のコストダウンを要求された。承諾するも何もない。アオイ電子は一方的に15%減らした金額しか支払わないのだ。

北斗自動車の経営は急速に悪化し、子会社のアオイ電子の株価も急落した。
秋に入ると、アオイ電子は倒産の噂まで出るようになった。
北斗自動車がアオイ電子を切って、中国企業から安価な電子部品を購入するという動きが出てきたのだ。品質は不安定だが、コストは半減する。
アオイ電子の取引は95%が北斗自動車である。北斗自動車との取引がなくなれば、経営は成り立たない。北斗自動車の100%子会社だから倒産は免れるとしても、廃業は必至であった。

「何だと?!折り返し融資ができないだと?!」
歳三は、大きな目をむいて、取締役経理部長の山南敬助をにらみつけた。
山南は取引銀行のイナホ銀行から出向してきて、経理全般を掌握している。
新鋭精機はイナホ銀行から三千万円の融資を受け、毎月きちんと返済していた。返済が完了すると、再び同額の融資を受ける。この数年間、それをくり返してきた。
新鋭精機のような中小メーカーは、ちょっとしたことで、すぐに運転資金がショートする。折り返し融資が受けられないと、資金繰りは急速に悪化する。
まして、このところ、アオイ電子からの発注が激減して、工場は開店休業状態だ。歳三は、営業部を叱咤激励して新規得意先の開拓に全力を注ぐとともに、連日のようにアオイ電子の幹部と打開策を練っていた。

山南は蒼ざめた顔で告げた。
「折り返し融資を断られただけではないのです。その・・・現在、当社に融資している資金も引き上げたいと・・・」
歳三の端麗な顔から表情が消えた。全身から怒りの炎がめらめらと上がる。
「とりあえず追加担保を出すことで、納得してもらえると思いますが・・・」
「追加担保?そんなもの、どこにある?この工場の土地も建物も、社長の自宅も、何もかも担保に入っている」
歳三の口調はもの静かだが、声は氷山のように凍りつく。山南は言葉もない。
「わたしが銀行と話そう。明日、あんたもいっしょに行ってくれ」
歳三は不退転の決意を眉間にみなぎらせた。

総務部長の井上源三郎が、おずおずと口を出した。
先代社長からの従業員で、現在の幹部社員の中では最年長になる。
「あのな、トシさん、いや、副社長・・・今月の給与、払えるのかね?半額でもいいから、給与だけは、なんとか渡してやりたいのだが・・・」
「井上さん、心配するな。給与はちゃんと支払う。第一、給与の遅配や減額なんぞ、社長が承知するものか」
近藤社長は、私財を処分しても給与を支払う。歳三は、よくわかっていた。

歳三と山南の報告を聞いて、近藤勇は大きな四角いあごをくいしばった。
近藤の私財は、先代社長の父親が亡くなった時のピンチを乗り越えるために使い果たして、ほとんど残っていない。
「今月は、なんとかできる。来月は・・・」
歳三は言葉を切って、眉をしかめた。
「街金融なら五百万くらいは融資してくれるでしょうが・・・」
山南がため息をついた。
「馬鹿言うなよ、山南さん。街金融に金を借りたら、倒産するだけだ。あんな高い利息を払うだけでも、資金ショートを起こす」
歳三が大きな目でにらみつける。
「だがね、トシ、銀行から融資を受けられなければ、倒産する」
近藤がうなった。
「アオイ電子から注文が入れば、前払いを頼める。いや、製品代金を担保にして短期融資を受けてもいい」
「土方さんの言うとおりですが・・・アオイ電子も廃業寸前ですからね。北斗自動車は中国企業と業務提携を進めているようです」
山南が言うと、歳三はそっぽを向いた。

翌朝、歳三は山南を連れて、開店と同時にイナホ銀行国立支店に乗り込んだ。
二時間半、財務資料を並べて副支店長の新見錦や融資課長を説得し、折り返し融資を断念する代わりに、融資引き上げと追加担保は勘弁してもらった。

「こいつは一時しのぎだ。新しい仕事が入らなければ、新鋭精機はつぶれる」
低くつぶやく歳三に、山南はうなずくことしかできなかった。


新製品を開発しろ

歳三は、営業部全員と主だった工場従業員を集めて、会議を開いた。
総力を挙げて、倒産のピンチを乗り切らねばならない。

「従来の製品を持って行って、買ってくれと頼んでも、だれも見向きもしない。
当然だよ。そいつは、アオイ電子、いや北斗自動車のための部品だ。ブレーキ事故を続発した上、データ改ざんまでやった会社の部品なんて、だれが買うか?
どうせ粗悪品だと言われるだけだ」
歳三は大きな目で全員の顔を見渡した。
「うちは粗悪品なんて作ったことはないよ。ブレーキ事故とは無関係だ」
工場長兼技術部長の斎藤一が不機嫌ににらみ返した。
「うちの製品は超一流だ。そんなことは、わかっている。だが、世間は、北斗の系列会社を信用しない。北斗がデータ改ざんなんかしやがるからだ」
歳三は斎藤をなだめてから、
「新製品を開発して売り込むんだ。今まで北斗にもアオイにも納めたことのない製品を開発する。北斗は中国企業と手を組むつもりらしいが、日本の町工場の技術力を見せてやれ!俺達を切り捨てるのは、北斗にとって大損害だと思い知らせてやるんだ」
「そりゃ新製品があれば、新規の得意先も開拓できる。新製品を持ち込めば、相手にしてくれる企業もある。門前払いは、もう沢山だ」
新八が身を乗り出した。連日、新規得意先の開拓に飛び廻っているが、たいていは敷地の中にも入れず、守衛に追い返される。
「だが、新製品てのは、どんな物だい?今時、よっぽどの物じゃなければ、相手は鼻汁(はな)もひっかけないぜ」
短気な左之助が目を怒らせた。工場主任の左之助は、暇をもて余す従業員達の不安を鎮めるのに、連日大汗をかいていた。

歳三は大きくうなずいた。
「そうだ。生半可な物じゃだれも相手にしてくれない。中国や韓国の企業にはまねのできない物で、しかも、これからの自動車に必要不可欠な物・・・」
「電気自動車やハイブリッドカー関係は、あらかた開発済みだしなあ」
斎藤が腕組みして頭をひねる。
「ロボット・・・これからは、自動車よりもロボットじゃないかな」
底抜けに明るい声が響く。
「総司、どういう意味だ?」
歳三が若者をにらみつけた。二十一歳になるのに、浅黒い童顔は高校生にしか見えない。
「トヨタはロボット開発に熱心だよね。若い労働力が不足する将来、ロボットの需要は高まると見込んでいるんだろうな」

「ロボットカーか。今はどこの自動車メーカーでも、ロボットカーの開発に熱中している」
新八が目を輝かせた。
「電気自動車の次はロボットカーだな。今、建設現場なんかで無人車両が活躍しているが、もっとレベルの高いやつを造りたいもんだ」
左之助が身を乗り出した。


ロボットカー・レベル4

ロボットカーは、人間が運転せずに自動的に走行できる自動車である。自動運転車、autonomous car、driverless car、self-driving carなどと呼ばれる。

加速・操舵・制御のすべてを自動的に行い、人間は完全に運転から解放される。ただし、緊急時やシステム能力の限界時に、手動運転に切り替える必要があり、事故等が起きた場合の責任は、運転手が負わねばならない。これが、レベル3のロボットカーである。
2014年のウィーン道路交通条約の改正により、レベル3の自動運転車が認められた。国連でも、ロボットカーの実用化に向けて国際基準を改正しようとしている。
現在、日本でも海外でも、レベル3のロボットカーは使用・販売されていない。日本政府は2020年のロボットカー実用化を目標に、法整備を進めている。
世界各国でも、ロボットカーのための交通規制の改正を検討中である。
トヨタ・日産など日本の自動車メーカーはもちろん、世界各国の自動車メーカーはレベル3のロボットカー販売に力を注いでいる。

中には、将来を見据えて、レベル4の開発に取り組むメーカーもある。
レベル4は完全自動運転である。現在の無人ダンプカーや無人軍事用車両のように限られた環境で走行するのではなく、一般道路を走行し、安全に関する操作から周辺監視まで、すべて運転システムが行う。

「いいアイディアだが、ロボットカーの開発は、どこもやっている。今さらうちあたりがシステム開発しても、相手にしてくれるかねえ?」
斎藤が、顔をしかめた。
「レベル3のシステムなら、見向きもされないだろう。だが、レベル4ならどうだ?当面は規制があって、レベル3しか走行できないだろうが、レベル3と4を自由に切り替えできるようにしておけばいい。法律が改正されしだい、レベル4で走行できる」
歳三は大きな目を鋭く光らせた。
「レベル4か。それなら、いける。だが、うちだけで開発するのは無理だ」
「ピンチに陥っているのは、うちだけじゃない。アオイ電子も廃業寸前だ。システムをアオイ電子に持ち込み、共同開発にする」
「そうか。システムの開発だけなら、うちだけでもできるな」
斎藤がようやく笑った。
「総司、システム開発はおまえに任せる。斎藤君、システムのハードからソフトまで、うちだけで仕上げるようにしてくれ。心臓部を掴んでいないと、うまいところを全部、アオイ電子に喰われてしまう」
歳三は獲物を前にしたトラのような顔で笑った。

「ロボットカーか・・・ぼくの考えとは少し違うけど・・・まあ、いいか」
天才少年はつぶやいてから、にっこりとうなずいた。
「忘れるなよ、総司、斎藤君。時間がない。年内に成果を上げないと、新鋭精機は倒産する。後、三ヶ月。三ヶ月で勝負が決まる」
歳三の顔は氷原のように凍りついていた。

総司は一週間でシステムを完成させた。前々から研究していたらしい。

歳三と斎藤から報告を受けて、近藤は大いに乗り気になった。
歳三は企画をまとめ、近藤とともにアオイ電子の開発部長を訪ねた。

アオイ電子はためらった。
小さな町工場から持ち込まれた企画に、大金を注ぎこむ余裕が、今はない。
だが、近藤が熱弁をふるい、さらに総司がシステムの詳細を説明すると、開発部長が興味を示した。
取締役会では反対意見が多かった。慎重論が大勢を占めた。開発部長が断念しかけた時、保科社長がOKを出した。
「このままでは、アオイ電子は消滅する。北斗自動車は、もはやアオイを必要としない。だが、北斗は、ハイブリッドカーでも電気自動車でも他社に出遅れた。ロボットカーだけは他社に負けたくないと、躍起になっている。アオイがレベル4のロボットカーを開発すれば、切ろうにも切れない存在になる」
保科社長は追い詰められた表情で、きっぱりと言った。
「責任は、わたしが取る。すぐに開発にかかってくれ」

アオイ電子にも残された時間は少ない。
中国企業との業務提携が正式に決まれば、アオイ電子は切り捨てられる。
新鋭精機もアオイ電子も総力を挙げて、ロボットカーのシステム開発に取り組んだ。

経理部長の山南は出向元のイナホ銀行を説得し、一括返済の短期融資を承知させた。これで三、四ヶ月はもつ。
歳三もアオイ電子から開発費を引き出すことに成功した。


以上、ここまでで半分終了です。

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