リーダーとマネージャーの違いを理解していないから利益率が下がる。絶版本無料公開中。


まえがき

人を率いるということにおいて、リーダーもマネージャーも似たような印象がある。そのため、多くの人が、その違いを明確に意識していない。しかし、実際には、この2つの役割には大きな違いがある。それを把握せずに漠然と人を率いる管理者が多ければ、会社組織は、だんだんと地盤沈下を起こしていく。最終的には、従業員のモチベーション低下、離職率の上昇、モラルハザード、そういった問題が次々と発生するようになる。

本書では、リーダーとマネージャーの役割をハッキリさせることにより、不測の事態を回避し、さらには会社自体の業績アップを狙っていく。


まず簡単に2つの役割の違いを説明しよう。

今、あなたはジャングルの中を探検していると想像してほしい。ビルのような高さの樹木に生い茂る葉。空は晴れているが、差し込む光はわずかであたりは薄暗い。耳を傾ければ、鳥や猿の鳴き声が響きわたる。あなたは、そんなジャングルをゆく探検隊の隊員だ。先頭を行くのは隊長だ。彼は、隊の進むべき方向を指示し、あたりに注意を払う。目的地を幻の滝と決めたのも彼で、そもそも、この探検の企画の発起人でもあった。沢を渡るのなら彼は率先して進んだし、橋を渡るにも、まず自分が進み安全を確かめた。隊員を勇気づけもした。

彼の仕事がリーダーの仕事だ。
組織の目標、目的を決めて、達成方法も決断する。実行に移るときには先頭にたち、つねに、成功したときのビジョンを語りチームを活性化する。

じょじょに、幻の滝に近づいてきた。バリケードのように樹の枝葉が交錯する森を抜けて、すこし開けた場所にでた。背の低い草が茂っている。その場所から、顔を上げると目の前には真っ白い大量の水の落下があった。ついに幻の滝にたどりついた。隊員たちの冒険は、ついに目的地に達したのだ。

この隊の一番後ろを行くのは副隊長だ。彼は、つねに後ろから全員の様子を見守っていた。水分補給を行っているか、隊からはぐれてしまった人はいないか、不安になっているものはいないか、そういったことを気にかけながら脱落者がでないように、注意深く観察していた。

幻の滝に到着し、喜ぶ隊員たち。滝が落ちる川に入ろうとする者もいる。それを副隊長は止めた。まず、安全確認をしよう。思ったよりも深くて流れが速いかもしれない。滝を見つけて目的は達成された。次は安全に家に帰ることが目的となる。隊長は副隊長の話を聞いてもっともだと頷(うなず)いた。

この副隊長の役割こそマネージャーである。
脱落者がでないように。目的に対してブレないように。現実的な問題につねに対処する。


社内では、誰がリーダーでマネージャーか

実のところ、実際の社会では、ここの切り分けがなかなか難しい。リーダーもやりつつマネージャーもやっているという人も多い。たとえば新しい組織は、リーダーがマネージャーも兼ねていることがおおい。ビジョンを語り率先垂範もしながら、現実的にメンバーたちが脱落しないか、よく観察し、問題が起きれば対処する。マネージャー人材が育ってくると、仕事の役割分担ができるようになるので、それまでは、リーダー兼マネージャーで我慢しなければならない。このときに危険なのは、どちらの役割も中途半端になることだ。ビジョンを提示して率先垂範するということは、相当なエネルギーと時間が必要で、それを行いながらマネージャー業務も行おうとすると、どうしても抜け漏れがでる。ようするにメンバーに脱落者が出てしまうのだ。ケアがたりないからやめてしまうという状況だ。これは必ず起こるので、早い段階でマネージャーを育成したほうがいい。


マネージャーのままの人

組織が大きくなってくると増えてくるのが、マネージャーのままの人だ。リーダーがリーダーの役割を全うするために、マネージャーを育てる。組織が大きくなると、今度は、その人がリーダーの役割を担うようになる。たとえば、課長まではマネージャーの仕事を求められているが、部長になるとリーダーの仕事を期待されるという具合だ。ただ、部長になっても課長の仕事のままの人たちがたくさんいる。これは、マネージャーの仕事のやり方こそが、その人の成功体験であることに深く影響している。

まず、その人が課長になれた理由はマネージャーとしての能力があったからだ。脱落しそうな人を助けたり、準備不足を補ったり、組織がブレないように調整したり、そういったことに長けていたから、あるいは、得意であろうと見込まれたから課長になったわけだ。そして部長になる理由も課長としての仕事をまっとうしたからだ。だから、課長としての仕事を完璧に行うことが、その人の成功体験であり、マネージャーに固執してしまう。

すると組織では、どういったことが起こるか。
リーダー不在になるのである。一番前を行く人、目的地を決める人が、これは目的地を変更する人とも言えるが、そのリーダーがいないために、組織は前に進まなくなる。ようするに従来の業務を完璧に繰り返すだけの組織になる。もっと良い方法や、新しい道を探すようなことは行われなくなるのだ。隊長がいない探検隊は、目的地にたどり着くことができない。

その理由は主に以下だ
不測の事態に対する方針転換。道を変えるなどができなくなる。
困難への挑戦。危険な沢や橋を最初に渡る人がいない。
ビジョンの欠落。なぜ、それをするのか。どんないいことがあるのか。モチベーションを持てなくなる。

ようするにリーダー不在の組織は、その場に立ち止まって、大人しくしているしかない。


ボトムアップの罠

実のところリーダー不在の組織作りに一役買うのはボトムアップという耳障りの良い言葉だ。全員経営と言い換えてもいいかもしない。基本的に会社組織は創業者によって生まれる。一人かもしれないし、複数人かもしれない。このときに会社には少なくとも創業者というリーダーがいる。成長した会社の創業者は、ある程度のリーダーとしての力を持っている場合が多い。そうじゃない場合は、会社が成長しないからだ。そしてこのときの会社の構造は、もちろんトップダウンだ。社長が自分で探検隊を率いている。

これが、ある程度会社が大きくなってくると、もっと下の方からの意見も取り入れて、みんなで頑張りましょうという話になる。そしてボトムアップ、全員経営だと言いだす。本当に一番下の平社員まで含めて、それが行えるならいいのだが、なかなか、そうはならずに、大抵は部課長レベルの意見を経営陣が参考にするということが多い。
ただ、課長はマネージャー職だ。うまく部長が育ってなければ、部長もマネージャー職だ。そうなると、マネージャーの立場の意見ばかりを重用することになる。そのときにリーダー職である経営陣が、きちんと意見の取捨選択ができればいいのだが、創業者グループが去り、世代交代をしていたりすると、役員レベルでもマネージャーが多くなってくる。すると、リーダー不在の方針決定が行われる。ようするに川に飛び込む勇気がない人たちが、川に入らなくていい計画を立てるのだ。挙げ句の果てには、幻の滝なんて目指さなくても、もっと交通の便のいいところに行こう。という話になる。

会社で言えば、ダイナミックなチャレンジがなくなり、実績のないことはやらない。すでにある道を通ろうという話になる。

斬新な商品Aは、市場に類例がなく売れるかわからない。ただ、長年の勘では、面白いと社内の3割の人が思っている。

人気商品のマイナーチェンジ商品Bは、市場に似た商品が多いが、マーケットがあることはわかっている。

このときに商品Aを選ぶにはリーダーが必要なのだ。うまくいくかどうかわからない。そもそも市場がないかもしれない。反面、自分たちが培ったノウハウから得た勘はゴーサインを出している。

マネージャーしかいない組織では、まず脱落者が出ないことを考える。探検隊の一番後ろから、怪我をする人はいないか、体調を崩す人はいないかと心配をする仕事だから、どうしても不確定要素の多いことはやりたくない。失敗した場合、商品Aに関わった人たちが脱落してしまうんじゃないか。そう考える。

勘違いしないでほしいのは、重要なのは、リーダーならAを選び、マネージャーならBを選ぶから、マネージャーはダメだということでなく、リーダーがいれば、AもBも選ぶことができる、ということだ。必要であればチャレンジもできるし、そうでなければ守りにも入れる。2つの選択肢があるということなのだ。マネージャーだけの組織では、Aを選ぶべきときでも選べない。これが決定的な違いなのだ。そしてこの違いが顕著にわかる数値がある。それは、粗利率だ。


リーダーが弱いと粗利率が下がる。

マネージャーが選べる安全な道はつねに粗利率が低くなる道だ。安全な道は誰でも歩めるし、歩いている人がいる。ようするに、市場に競合が多いのだ。

「実績のない新商品はやらない」

これは、マネージャーの典型的な矛盾なのだが、新商品でも実績がないとやりたくないのが、マネージャーなのだ。しかし、新商品なのだから、実績があるはずがない。では、どういった商品なら取り扱うのか。

それは、新商品のようだけど、実際は既存商品のマイナーチェンジ品というものだ。色が変わったとか、サイズが変わったとか、そういった商品だ。

これは他社でも思いつく。みんな似たようなものを作るのだから、差がつくのは価格しかない。安売りがはじまる。すると、粗利率が下がる。悲しいことに、マネージャーの選択では、営業利益率は下がる一方なのだ。

対して、リーダーがいて商品Aを選択したとしよう。市場には競争相手がいない。だから、価格競争がない。利益を十分にとって売ることができる。もちろん、失敗する可能性も高い。しかし成功すれば利益率は飛躍的に上がるし、そのアドバンテージは場合にもよるが、数年から十数年にも及ぶ。

強いリーダーが果敢な選択をして高い利益率を得ている企業は昔で言えばソニーだ。ウォークマンのような前例のない商品を作り上げて、十分な利益を得た。現在で言えばアップル社だろう。リーダー中のリーダーであるスティーブ・ジョブズが選択した商品は、どれも市場に類がなく、同社は圧倒的に高い利益率を誇っている。
逆に組織がマネージャーばかりになって果敢な選択ができなくなっているのは、現在のソニーだ。二番煎じの商品が大半になり粗利率は低下している。実のところ大企業の営業利益率が下がっている現象には、人件費などを含むコストが高いというよりかは、社内の管理者たちの総マネージャー化が原因だ。


リーダーの才能とマネージャーの才能は違う

リーダーとマネージャーの違いを、ここまで説明してきたが、もっと簡単にわかりやすくしたいと思う。

リーダーとは父親だ。
マネージャーとは母親だ。

父親は、細かいことは言わないが、大きな決断を行い、イザというときは自分が動く。

母親は、つねに事細かく子どもに指示をして、忘れ物や、宿題が重大事で、子どもの日常的な健康やしつけについて留意している。

父親は子どもを己の姿で引っ張り、母親は子どもが遅れないように後ろから助ける。

もちろん、各家庭において父母の役割は異なるから一概には言えないのだが、典型的な日本の家庭だと、リーダーを父親が担い、マネージャーを母親が担う。

ここで重要なのは、リーダーとマネージャーに必要な才能は違うということだ。スポーツにおいては名選手は名監督になれないという話があるが、ビジネスにおいては、名マネージャーが名リーダーである可能性は低い、と言える。

それは、リーダーとマネージャーの仕事があまりに違うからだ。マネージャーをまっとうしようとすれば、リーダーに必要な、人を引っ張る力が失われる。

マネージャーは主に脱落者を出さないように気をつける。たとえば社内で言えば、辞める人が出ないように気をつける。あるいは、サボる人、これも広い意味では脱落者だ。社内にいながら会社を辞めたようなものだからだ。
脱落者がでたり、サボる人がでる一番の原因は、リーダーが新しい目的を設定することだ。今までと違う目的だから、社員はついてこれない。やり方が変わったから対応ができない。それでモチベーションが下がって辞めてしまう。だから、優秀なマネージャーになればなるほど、リーダーになれなくなる。

会社組織を作る立場にいる人たちは、それをしっかりと意識した方がいい。平社員でもリーダーに向いている人を選ばなければいけない。マネージャーとして実績をあげた人の中からリーダーを探しても、足が遅い人を陸上部に勧誘するようなものだ。


あとがき

さて、粗利率を下げている原因は、社内のマネージャー化とわかっていただけただろうか。リスクの最小化とか、業務の効率化という耳障りのよい言葉のもとに、保守的な選択が繰り返された結果なのだ。

あなたは、

「実績のある新商品」
を求めていないだろうか。そんな商品は誰だって思いつくから安売りするしかないのだ。

あなたがリーダーの立場なら、組織のマネージャー化に気をつけていただきたい。本書は、警鐘となったはずだ。

あなたがリーダーでなく、社内が総マネージャー化しているなら、是非、リーダーを目指してほしい。いろいろな軋轢はあるだろうが、最終的に組織が生き残るには優秀なリーダーがあらわれるしかないのだ。

実は第三の道がある。自分がマネージャーに向いているけどリーダーには向かないと思っている人にうってつけの方法だ。リーダーに向いている人を探して、その人と組むのだ。年下でもいいから、これぞというリーダー的な人物を見つけ出し、その人にとって有用なマネージャーになるのだ。その人を出世させるつもりで手伝うのだ。社内に、そんな強力な腹心がいる人はなかなかいないし、その人は、あなたがこれぞと思ったリーダー的な人だから、他の社員たちと比べたらずいぶんと戦力が上だ。数年で、それなりの地位まで駆け上がれるだろう。あなたは、彼の下で最高のナンバー2を目指せばいい。

では、あなたの活躍によって、あなたの会社の利益率が飛躍的に向上することを祈りながら、本書を終わらせていただく。


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