タイトル
シェークスピア「夏の夜の夢」に、なぜ妖精がでてくるのか?「偉いさんのハラハラドキドキ」を楽しむ時代背景があった。10分で読めるシリーズ
著者名
藤田星悟,MBビジネス研究班
発売日
2015/05/01
概要
10分で読めるミニ書籍です(文章量7000文字程度=紙の書籍の14ページ程度)
「役立つ」「わかりやすい」「おもしろい」をコンセプトに個性あふれる作家陣が執筆しております。自己啓発、問題解決、気分転換、他の読書の箸休め、スキルアップ、ストレス解消、いろいろなシチュエーションでご利用いただけます。是非、お試しください。
前書き
シェークスピアの芝居を一度でも見たことのある人は、まるで学芸会のようだと思われたのではないだろうか。こんな芝居が教科書に載ったり、文化人が素晴らしそうに語るのはなぜか分からない。これがクラシック音楽だったり、バレエ・オペラだったりすれば、退屈するにしても迫力を感じるだろう。が、シェークスピアの芝居の筋立ては童話のようだし、演技も大げさだから学芸会に思えてしまう。ことに喜劇は悪ふざけしているようにしか思えない。
その代表が「夏の夜の夢」で、実際に観劇した方なら、退屈を通り越して腹が立ったのではないだろうか。何で妖精が出てくるのか?子供だましか?
筆者は中学から演劇に携わり50年以上芝居を見続けているから、身を持ってシェークスピアのつまらなさは知っているつもりだ。しかし400年前のロンドンでは連日満員の盛況だったらしい。昔はテレビや映画がなかったから娯楽が少なかったせいと思われるかもしれないが、ロンドンには沢山の劇場があり、人気の演目はすぐに盗まれたのだ。翌日、堂々と同じ演目が別の劇場で上演される。
作家であるシェークスピアは、盗まれることを心配して役者には全部の台本を渡さず、その役者の部分の台詞しか渡さなかったと、専門書に書かれている。シェークスピアの芝居には長台詞が多いのは、盗作を恐れたからという説には信憑性があるのだ。だからこそ、シェークスピアが活躍した時代は、娯楽が少ないどころか、むしろ芝居小屋が乱立していたのが事実なのだろう。
ビデオも映画もない時代というのもあるが、戯曲としてもシェークスピアは作品を後世に残すつもりはなかったに違いない。定本というのがなく、シェークスピアの台本はバラバラにしか残っていない。後の世の興行主が、それぞれの役者に渡した部分の台詞を集めて、「こうだろう」としたのが、現代の我々が読むことができるシェークスピアなのだ。
こんな学芸会のような芝居が、なぜ当時は観客が詰めかけ、喝采を浴びたのだろうと、それを探るのも、シェークスピア劇を見る楽しみなのだ。