タイトル
あなたの力がお金を超えるとき~その負け、本当に負けですか?10分で読めるシリーズ
著者名
渡辺孝宏,MBビジネス研究班
発売日
2015/03/20
概要
10分で読めるシリーズとは、読書をしたいが忙しくて時間がない人のために、10分で読める範囲の文量で「役立つ」「わかりやすい」「おもしろい」を基本コンセプトに多くの個性あふれる作家様に執筆いただいたものです。自己啓発、問題解決、気分転換、他の読書の箸休め、スキルアップ、ストレス解消、いろいろなシチュエーションでご利用いただけます。是非、お試しください。
まえがき
かっこよくない仕事、儲けられない仕事が増えることも必ずしも悪いことではない
1980年の日本企業の時価総額は、1位がトヨタ自動車で1兆3220億円、2位が松下電器で1兆2060億円、3位が日産自動車で1兆1330億円と続く。これらの企業の強みは、日本のみならず道さえある国であれば自動車は使え、電気供給さえあれば電化製品は使えるということにある。一種の共通言語なのだ。時価総額の4位以下を見ると、東京電力、新日本製鉄、日本石油と続く。いわゆる社会インフラに関わる企業である。これらは官とのつながりも強く、日本の近代化の早い段階から整備された企業である。「つぶせない、社会に欠くことができない」存在となっていくのだ。経済界における一種の特権階級ともいえるし、逆にこの種の企業が真っ先に危機に晒されるような国はショックアブソーバーがなくて不安である。このような実業は社会の発展に伴ってより保証された存在となり、儲けの押し引きで勝負をする領域はより軽薄で(差別表現ではない。取り扱う品物の性質が鉄や重機からプラスチックや紙に変わっていくことを表現している)かつては商売にもならず、子供のあそびや家庭の雑用と見られていた分野へとシフトしていくのである。
発想の転換。大資本に食い尽くされる弱肉強食の冷たい時代なのではなく、富が有り余っているので今までよりも価値の追求に集中できる時代なのだ。富とは即ち、食糧の安定供給であり、エネルギーの安定供給であり、行動の自由が保障される程度の安全である。これらが人口よりも少なかった場合は、競争によって我田引水する必要があったが、いまや食糧の廃棄、自然エネルギーでの新たな発電に加えて火力発電に用いる天然ガスの供給ルートの充実、害獣の駆除と街中の危険要素の排除と、すでに舞台は整っている。あるのはゲームの勝者になったか、敗者になったかというスティグマのみであり、なかにはこれを辛うじて労働のモチベーションにする者もいる。餓えなくなった世の中であるのに、餓えていた時代の習慣から脱却できていない、という言い方もできる。
NISAや年金の運用などで、いままでファイナンシャルプランナー等の専門的な仕事であった「数字上の富の創出を運用によって行う」という仕事が、個人で財産を蓄えた一般人にも広がるようになってきている。デイトレーダー等も同様だ。ということは、社会全体の富の総数はすべての人が数字上のベネフィットを生み出さなくても、自動的に上がっているといえる。そのため、経済を度外視し、お金から自由になって生きる人が増えても、特に困ることはないのだ。ただし、周りの人の脚を引っ張るのではなく発展性のある仕事が出来る人しかその位置には就けないだろうし、その資質や理解を持っている人ならば誰でもなれるとも言える。むしろ、運用による富の創出に多くの人が夢中になり、その世界で生きる人の人口が増えることで、お金と関係が無い世界での競争率は下がっていく。しかも、世の中は運用してくれる人のおかげでリソースに満ち溢れている。これは何を意味するか。今の時代は、誰でも何かの分野で超一流になれる時代なのだ。