上司徹底活用マニュアル。 サラリーパーソンの起業家精神はボスマネジメントにこそ発揮せよ。半分無料公開中!

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上司徹底活用マニュアル。 サラリーパーソンの起業家精神はボスマネジメントにこそ発揮せよ。


Contents

まえがき

いつものことだが、ボスにイラっとした。SNSに愚痴をアップする寸前で思い止まった・・・。

今日一度でもそんな「いつものこと」にストレスを感じた人はきっと少なくないはずだ。「どうしていつもこうなるんだろう。でも仕方ない。」そんな風に無理矢理頭の中で自分を納得させようとしても、そのストレスは消化されないまま、また朝を迎える。

それで本当に良いのだろうか?あなたは必死に頑張っているのに。

いや、自分にも夢があった。本当は熱意を傾けられる仕事がしたい。でも・・・家族もあるし、このご時勢では転職も難しいし・・・。あなたはこう思っただろうか。

一度だけの人生を、家族への責任や不況を言い訳に諦めてしまって、本当に良いのだろうか?毎日それほどまでに頑張っているあなたのエネルギーを、もっと別の方向で効率よく燃焼させることができたとしたら?

自分自身を、組織の歯車にすぎない、給料は我慢料だ、生活のために仕方ないんだ、と決め込んではいないだろうか?

それではもったいなさ過ぎる。そこで、突飛かもしれないが、次はこう考えてみてほしい。

あなたが起業家で、ボスがあなたの顧客だったら?

あなた次第で、ボスは仕事人生最大のメリットをもたらす「顧客」に生まれ変わる。(場合によってはクレーマーにも豹変するので注意が必要だが)

本書の構成
梓川流ボスマネの解説 第1章~第10章
梓川流ボスマネの実践と応用 第11章~17章

(※以降、本書ではボスマネジメントを適時ボスマネと呼称する)


目次

上司を活用する。それがボスマネジメント。
梓川流ボスマネの核。
働き方革命の時代に。
平和的サバイバル戦略としてのボスマネ。
上司とともに成功するために
梓川流ボスマネ 事例
職場で生存戦略を描け。
『ボスマネ』の必要性が、『起業家精神』を目覚めさせる。
起業家精神を育む。
組織を鳥瞰せよ。心に複眼を持て。
実践 ボスマネ/プロファイリング
Aタイプ スタンドプレー型ボス
Bタイプ ネグレクト型ボス
Cタイプ 人格者ボス
上級編 飛び級ボスマネ
セーフティゾーンを確保せよ。
ボスマネされたら本望。


上司を活用する。それがボスマネジメント。

「上司」という言葉から、どんなことを思い浮かべることができるだろうか。
「ボス、管理者」。
では彼らは何を管理しているのか?多くの場合、「部下を管理する者、プロジェクトを管理する者」という大まかな印象をだろう。ごく当然のことだ。そして、同時にこう思うだろう。「上司を活用?どうやって?ボスマネジメントってどういうこと?」

そう。一般的に職場の人間関係、いわゆるパワーバランスにおいては「ボスが部下を/部下の仕事ぶりを管理する」という意味合いで認識されている。そのため、このパワーバランスに逆行した「ボスを活用する」という概念は、耳慣れない新しい響きを持って迎えられる。また、実感を伴いにくいことも否めない。そこで、著者の長年の経験から「ボスマネジメント」をより実用的な言葉に言い換えてみた。

「上司を活用する」

突飛に聴こえるかもしれない。「・・・果たしてそんなことが可能なのか?」という、どこかわくわくするような感覚があなたの中に沸き上がってきてはいないだろうか?もし、少しでも心がざわつく実感を覚えたとしたら。それはあなたの明日が変わり始めたサインだと著者を信じてみてほしい。

今やMBAでも講義されている注目のマネジメント技術「ボスマネジメント」。その発祥の地が、あらゆる多様性を内包し常に日本の10年先を行くと言われるアメリカ合衆国であることもまた、「ボスマネジメント」をマスターする価値と必要性について説得力を与えてくれる。

多様性社会を生き抜くための、エッジが効いた最新仕事術。それがボスマネジメント。


梓川流ボスマネの核。

ここで、基本に立ち返ろう。それほど有用なマネジメント手法でありながら、これまでの社会人経験の中で、なぜ「ボスマネジメント」について触れる機会がこれほどまでに少なかったのだろうか?それは、現代日本の「企業文化」が抱える、どこか鬱屈した行き詰まり感と符号する。

まるで軍隊のように整えられた縦割りの人間関係を安定させるためには、上司から部下への一方向の管理体制を敷くことが最も簡単だった。特に歴史ある大企業ほどその傾向は未だに強く、ある意味、官僚的でセレモニー重視の組織文化は日本の伝統的な姿だ。そのような組織文化の中では、「部下が上司を活用する。」という発想自体が異端視されるだろう。
しかし、高度経済成長期、バブル期、その後の経済停滞期を経て、それまでの「縦割り企業文化」ではもはや行き詰まりを打破することが難しいことが明らかになってきた。これは周知の事実だ。また、社会や経済の流れに伴い、働き手の家族構成・ライフバランス・価値観も常に変化(進化)しており、産休や育休のような個人レベルの働き方の再構築だけではなく、ワークシェアリングやクラウドという集団レベルの働き方の再構築までが必要とされている。

その結果、何が起こったかというと― 職場に「多様性」がもたらされたのだ。
単民族国家日本が誇る従来の「縦割り組織」では難しかった、既存の枠組みに縛られない仕組み。働き手=あなたが生まれ持ったクリエイティビティを発揮させられる新しい組織モデルへの進化。私たちが生きているこの時代は、「働き方革命」と言っても過言ではないほど、今までにない挑戦の機会に満ちている。その挑戦の一つが、「上司を活用する」ボスマネジメントであると著者は確信している。
さらに「ボスマネジメント」を強力な武器にするためのエッセンスとして著者が融合させたのが「起業家精神」である。組織に属して働く場合でも、まるで起業家が自らの使命に邁進するように自らの役割に確かな芯を通すこと。それにより「使われ感」は廃され、仕事への意欲がわき起こり、より楽しく有意義な時間がもたらせる。始めは理想論のように聞こえるかもしれないが、夢でも絵空事でもない。実現可能なのだ。そのことを読者の方々にお伝えしたい。

起業家になることは、当然のことながら簡単ではない。家族を養う立場にあるならばなおさらだ。それは、動物園で手厚く保護され長らく野生を忘れて生活してきたライオンが、再びサバンナへ帰される時のように、あらゆる面で劇的な変化がもたらされるからだ。しかし、人間の場合はもっと柔軟に考えることができる。『組織に属しながら”起業家精神を持つ”こと』これは誰でも可能だ。それをライオンに例えるならこのように言えるだろう。

『自然保護区で研究対象として保護され、一定期間を・GPSを装着された後にサバンナに帰された。その際、”人間からもたらされるメリット―食餌の保証、医療、密猟者からの保護”を学習。サバンナに帰された後もそのメリットを記憶し、自らの群れをサバンナで率いながらも自然保護区内に留まり、人間から一定の距離を保ちつつ、その観察下にあることのメリットを享受していく道を選んだ。』
つまり、人間とのある種の信頼関係がそこにあることを示唆する。

すなわち、『組織との信頼関係を維持しつつ自律・独立心を持つ姿勢』これが「ボスマネジメントと起業家精神」を融合させた仕事術 ”梓川流ボスマネ”の核になっている。

組織との信頼関係を維持しつつ自律・独立心を持つ。


働き方革命の時代に。

前章でお話ししたように、私たちは今まさに「働き方革命」の時代に生きている。このような時代の変革期には、変化する環境においても通用するサバイバル戦略が必要とされる。人間が社会的生物であり、あなたが大自然の中で自給自足の生活を送っている究極の成功者(余談だが、著者はこのスタイルの生活にとても憧れている。オフグリッド、既存の社会システムから脱却して生活することは、並大抵の人ができるわけではない。このトピックはまた改めて…)でない限り、それは避けて通ることが難しい。
サバイバルを楽しむか、あきらめて組織に「使われる」道を選ぶか。きっと本書に興味を持ってくださった方は、前者であるだろうと著者は思う。そしてもうひとつ、言うまでもなく(極端かもしれないが)、「楽しむ」ことも、サバイバルの秘訣だ。

組織での創造的かつ平和的サバイバル戦略として。
上司と信頼関係を築き、ともに成功するための戦略として。

ボスマネの必要性について、次章からこの2点を切り口に掘り下げていこう。

「働き方革命」時代の平和的サバイバル戦略。


平和的サバイバル戦略としてのボスマネ。

挑発的なチャプタータイトルを付けてはいるが、「サバイバル」といってもエゴイスティックになってはいけない。組織の中で成功するためには、他人を陥れたり、自分さえ良ければと保身に走ったり、上司に媚を売ったりするようなことでは通用しない。
組織をひとつの生命体、例えば人体だとすれば、血液はお金に、脳は役員会、そして各臓器は各部門に当たる。さらに臓器を構成する細胞ひとつひとつが私たち働き手といえる。健康な身体は新陳代謝が活発で恒常性が保たれているように、組織でもそれぞれの部門・人が、共通の目的「組織の成長、生き残り」に向かって、健全に相互作用していくことが大切だ。また、自分自身の心身を健康に保つ努力や、より良い働き方を求めていく意欲を持つことも忘れてはいけない。

つまりボスマネは、「平和的サバイバル戦略」なのだ。このスタンスを基本姿勢としていこう。

組織における平和とはなにか。それは馴れ合いや惰性とは違う。人間関係のネガティブなストレスが少なく、穏やかで、かつクリエイティブな雰囲気が職場に満ちている状況と定義してみよう。そのような職場では、きっと働き手それぞれが自律・自立して仕事に向かい合っている。「個」が充実している状態だ。おのずと生産性が上がり、連帯感が湧き、組織として「集合体」の機能が向上していく。自然と「チーム」としての絆さえ醸成されているだろう。
そして上司と部下との間に信頼関係が成り立ち、人間として尊重しあえる関係性が育まれる。これは理想論だが、決して絵空事ではない。あなたが平和裏の内に上司とうまく協力関係を築き、組織において活躍の場を広げていくための「平和的サバイバル戦略」。そのひとつの戦術が、他でもない「ボスマネ」なのだ。

一方現実に目を向けてみると、部下に仕事を丸投げしたり、パワハラまがいの言動をしたり、権力に媚びたり、到底ボスマネなんかできないような酷い有様の上司が大勢いる。
「そんなやつらのために、なぜ私が/おれがこれ以上気を使わなければいけないんだ。」
と思う方もいるだろう。それは当然のことだ。しかしここで腐ってしまってはおしまいだ。あなたがもし上司との間にストレスフルな人間関係を抱えているなら、今度はこう考えてみよう。

「上司も人間だ。そして永遠ではない。」上司にもまた上司がいて、家に帰れば夫や父であり、教育やローンなどの問題を抱えている一人の人間だ。一歩会社を出たら、あなたの上司ではなくただの人だ。しかも、「あなたの上司」は今目の前にいるA氏かもしれないが、来年度には配置換えされ、次にB氏が赴任してくるかもしれない。つまり「永遠ではない」。つまり、『活用すべきはボスの地位』だ。このことを肝に銘じて、あなたが働きやすい環境を創りあげていこう。それが「平和的サバイバル戦略」なのだから。

ボスも人間だ。そして永遠ではない。活用すべきはボスの地位。


上司とともに成功するために

組織全体の成功は、もとをたどれば最前線の働き手の地道な活躍の集合体だ。あなたが顧客と交わした契約、契約に至るまでの努力、その積み重ねである。
昨日の、または今日のあなたの職場での様子をプレイバックさせてみよう。メールやミーティングで顧客の要望を汲み取り、企画書や見積書に落とし込み、顧客と交渉し・・・。スマホやPCの画面と向きあっている時間がほとんどかもしれない。しかし組織に属して仕事をする以上、あなたは決して一人ではないはずだ。顧客へのメールに、あなたの提案を盛り込む際に決済を仰ぐ人物、宿題を持ち帰ってミーティングの結果を報告する人物、次なる提案に盛り込むため掛け率を5%下げるための承諾を仰ぐ人物― あなたのボス。必ずそこにボスの存在があるだろう。

ボスの存在。非管理職でも管理職でも、いわゆる社長・事業主でない限り例外なくそこにボスがいる。ボスをおざなりにした自己判断では、組織で動くことは事実上不可能なのだ。
そこで、「ボス」の存在をどうとらえるか。ここに梓川流ボスマネの最大の思考法がある。

『ボスも、あなたの社内顧客である。あなたは、ボスの取引先である。顧客を満足させよ。』

この発想を既に持っていた方はきっとニヤリとしただろう。「え?ボスがお客だって?しかも社内の?」と首をかしげた方も、まずはマインドセットをこのように持ち、次の質問への答えを考えてみてほしい。

『ボスがあなたの社内優良顧客になったら、どんなメリットがあるだろうか?』

答えはいろいろ挙げられるが、その中で最強のメリットといえばこれだ。
『あなたに自由が与えられる。』

人は嬉しいことや悲しいことがあると、共感を求めて第三者に伝えたいと思う。分かりやすいところでは食べものや化粧品、レストランでの体験など、いわゆる”口コミ”だ。同じことが”人”に対しても起こるのだから、この点を活用しない手はない。
組織の場合、”口コミ”が発動するタイミングは、あなたの仕事ぶりがボスに信用され感謝された時だ。そして、『ボスがあなたという部下を持っている自慢』はボスと対等またはそれ以上の職位にある人物に伝播する。ボスの潜在意識には『優秀な部下を持っている自分は満足だ。自分は上司として成功している。』という自己肯定感と、あなたという『取引先』への絶対的な信頼がうまれる。そしてあなたの口コミは組織のさらに上層へと伝わり、あなたの存在が認識されるのだ。その結果、『優秀な部下を持っているボス』の評価も高まり、もちろんあなた自身の評価も高まる。『あいつに認められた人物なのだから。』と一目置かれることは、そうそう簡単なことではない。

ただしそれは一朝一夕で達成されるものではなく、多くの場合地道な積み重ねの末に達成されるものだ。著者の実体験からひとつ、分かりやすい成功例を次章でご紹介する。

ボスはあなたに自由を与える存在だ。


梓川流ボスマネ 事例

著者の勤務先:日本企業 某国から食材を輸入し国内直営店で小売。
著者の業務内容は、品質管理監督者およびお客様対応責任者。

当時のボスは、穏やかで優しい性格であった。一方、仕事を部下に丸投げ・放任するタイプだった。従って指示の出し方は理解しづらく、経過について意見を求めてもかえって分かりづらく、こちらが戸惑ってしまうことも多かった。
そこで著者は、ボスがなぜ丸投げ・放任するのかを考えた。その答えはとても単純だった。  「忙しい。性格がおおざっぱ。」
こう理解した著者は、ボスへのスタンスを変えた。ボスの指示を聞きながらもある程度聞き流し、「この仕事の結果がどのようになれば良いのか」「その結果を基にボスは何を判断したいのか」を確認することに重きを置いた。そして8割型固めてからボスへ返球する。その際、ボスがOKを出せるような完成度であることが大切だった。なぜなら、ボスのOKラインをクリアすることで十分だからだ。

著者は、このボスの関係性においては、日々の業務では『ボスの満足ライン』をクリアすることを優先しようと判断した。なぜなら、著者が完璧主義者(自分自身に対し)であるのに対し、ボスは必要最低限でOKとするタイプだったため、求める完成度の標準が異なっていたからだ。
しかし、仕事の完成度がボスの満足ラインではない場合は、また別の作戦が必要だった。

特に難しいお客様対応(いわゆる苦情)では、まず第一に『お客様が苦情をおさめ、会社の対応にご満足くださること』が優先される。一方でボスは『二重クレームを出すことなく、迅速かつ丁寧にお客様の苦情をおさめること』を著者に期待する。
つまり、『お客様が満足するライン』と『ボスが満足するライン』のふたつの『満足ライン』が著者に課されてくるのだ。その場合には、著者は全力で『お客様対応』を行い、苦情案件を円満に着地させる。その結果、苦情のお客様から著者の対応への満足と感謝の言葉が届く。
このように、一連の進捗状況を遅滞なくかつ簡潔にボスに報告することで、ボスの満足ラインを大きくクリアし、信頼を勝ち取って行った。

その結果、何が起こったか?『こいつに任せておけば安心だ。』とボスが認識し、著者はより広い決裁権を得て、時にボスからアドバイスを求められるようになった。一目置かれる部下になることで、組織に属しながら自由と挑戦の場を手にする事ができた、一つの成功例だ。その他の具体例については後述していく。

ボスの、タスクの、『満足ライン』を見極めよ。


職場で生存戦略を描け。

「ボスマネ」について、だいぶ興味を持っていただけただろうか。小手先のおべっかやゴマスリとは全く異なる次元で、自らを律しながら人間関係のストレスを軽減し、日々楽しく仕事をしていくための仕事術であることをご理解いただけたと思う。同時に、組織内で自分を取り巻く状況を観察し、どのように立ち回っていけばより良い職場環境をつくりあげることができるかを常に考えて実践していくことが大切だ。それは、職場で生存戦略を描くことといえよう。

「組織との信頼関係を維持しつつ自律・独立心を持つ姿勢」を保ちながら、自らがどのように組織で活躍していきたいのかイメージすること。そうすればおのずと、誰との協力関係が必要なのかが、明らかになってくる。多くの場合、最も身近な協力者はあなたのボスだ。上位者が持つ力や決裁権で、あなたの後押しをしてくれる。一方、同僚やあなたの後輩は、基本的にライバルであると考えた方が良い。年功序列制度が薄れつつある今、同僚はもちろん後輩ももちろん、職場での生存競争を勝ち進んでいくことに真剣だ。

ではどのように生存戦略を描いていけばよいのだろうか?その答えもシンプルだ。
『唯一の存在になり、全幅の信頼を獲得すること。』
「この件はあいつになら安心して任せられる。」その全幅の信頼こそ、職場での生存戦略に欠くことができない最重要ポイントだ。なぜなら、あなたに取って替わろうとするライバルを排除するバリアになるからだ。職場での生存戦略において、守りはこれでほぼ完成する。あとは、あなたの中で目覚めかけている『起業家精神』を解放して、さらに良い職場環境をつくり出していくことに専念するだけだ。

唯一の存在になり、全幅の信頼を獲得せよ。


『ボスマネ』の必要性が、『起業家精神』を目覚めさせる。

著者の実体験を引き続きご紹介していきたい。
今を遡ること10年。某外資系金融企業の重役秘書として採用された時のことだ。その後の数年間は、実に貴重で興味深い体験の連続で、著者の起業家精神が目覚めたのもまさにその時期であった。

まずボスと対面すると、それまでの社会人生活10年間に出会ったことのない、他者を圧倒するような存在感が強烈に焼きついた。かといって威圧的というわけではなく、カリスマ的なオーラを放っていたという表現がふさわしい。これからそのボスの秘書として雇われるからには、自分もそれなりの人間性を身につけていきたい・信頼を勝ち取って、少しでもボスに役立てるよう努力しなくては、と決心したことを今でも鮮明に覚えている。

とはいえボスも組織に属しており、起業家、いわゆる実業家というわけではなかった。しかし、厳しい条件のもとで組織を生き抜き勝ち抜いてきた人物にしか出せない深みをたたえた、人間的な魅力があふれるボスであった。また、高いポジションにおごることなく謙虚な姿勢を以て自ら仕事を取りに行く姿勢に幾度も敬服したことをよく覚えている。
秘書として、同僚や部下には見せられないであろうボスのちょっとした弱音の聞き役となったり、いわゆる会社勤めではなかなか体験できないシーンで黒子として文字通り「仕えて」いた。
それからの数年間はあっという間に過ぎ去った。完全なる黒子としてボスの名の下で行う書類業務や、鞄持ちとしてボスの顧客である役員級の人物たちが集う会合に同行するうちに、あることに気がついた。組織の頂点に上り詰めた人物、成功した起業家や実業家に共通点があったのだ。

『子どものような遊び心。』

自由で悪戯好きな子どものような遊び心を持ち続ける一方で、厳しいビジネスの世界で成功を収める彼ら。彼らは間違いなく、執務中は想像を絶する重圧にさらされている。数字、プライド、後輩からの追い上げ、パワーバランス。中間管理職にも若手社員にも、そのプレッシャーの大きさを計り知ることは難しい。
しかしふとした時にもらす弱音や、健康上の不安など、おそらく彼らのパートナーにも話しているかというと必ずしもそうではないだろうと思われるような本音を、秘書のそばではポロリとこぼしてしまう一面もあった。秘書としてはそんな時、どうしたらよいだろう?といつも考えてはいたものの、結局は『ボスが外での仕事に専念できるよう、与えられた仕事をきちんとこなすこと。』に落ちついた。それが、ボスが求める部下の姿だったのだ。さりげなく距離を保って寄り添い、あたたかいお茶を差し出したり、外出時に鞄を持ってお見送りをする。そうした黒子としての役割が求められたのが、当時の著者であった。

執務中の彼らからその部分を伺い知ることは難しいけれども、秘書としてボスの背中越しに観察することで伺い知ることができた貴重なヒントだった。それからは、秘書としてどのようにボスと仕事をしていくか、その点に集中した。与えられた仕事をこなすことの他に、ボスは秘書に対して何を求めているのか。そこにボスの信頼を勝ち取るためのカギが隠されていると確信できたからだ。

今思い返すと、この時がまさに著者が『ボスマネ』の必要性に目覚めた瞬間だった。まさに目の前に突然新しい扉が現れ、ためらいなくその向こうの世界に足を踏み入れたのだった。

そして、少しでもボスの思考に近づき、把握し、秘書として信頼を勝ち取り高みを目指したいと思った。そのためには、並大抵のことでは足りない。リサーチを重ね、都内のビジネススクールに通うことを決めた。そして半年に渡り、米国流オフィスマネジメント術を網羅する講座を受けることに決めた。

起業家精神が目覚めた瞬間、次のドアが開く。


以上、ここまでで半分終了です。

本書でこのあとに書かれているのは

起業家精神を育む。
組織を鳥瞰せよ。心に複眼を持て。
実践 ボスマネ/プロファイリング
Aタイプ スタンドプレー型ボス
Bタイプ ネグレクト型ボス
Cタイプ 人格者ボス
上級編 飛び級ボスマネ
セーフティゾーンを確保せよ。
ボスマネされたら本望。

となっております。

 


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