中間管理職のリーダーシップ。新しい切り口で身近な組織の雰囲気を良くしよう!半分無料公開中!

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中間管理職のリーダーシップ。新しい切り口で身近な組織の雰囲気を良くしよう!


Contents

まえがき

みなさんは「組織運営」とか「リーダーシップ」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
「会社において、いかに部門の利益を上げ、会社全体の組織活性化を図るか、そのためのリーダーとしての役割とは何か?」
というように、組織運営やリーダーシップという言葉は、「会社」に強く結びついているイメージがあると思います。そして、中間管理職をはじめとする多くのビジネスパーソンは、会社においてリーダーシップを発揮しつつ、適切に組織運営を行うのがいかに難しいかということを、肌身をもって感じているのではないでしょうか。
この本では、会社における組織運営の方法や、リーダーシップの発揮法について紹介することを目的としています。そう聞くと、みなさんの中には、
「どうせ、ありきたりなハウツーを並べているだけなんでしょ?そういう本は今までたくさん読んだけど、全然解決しなかったよ!」
と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
残念ながら(?)、この本では会社の組織運営におけるハウツーを単に並べてはいません。なぜならば、いくら詳細にハウツーを述べたところで、みなさんが抱える悩みは千差万別であり、そのすべてに対応できるわけではないからです。
この本では、そのような対処療法的なハウツーではなく、みなさんが組織運営やリーダーシップという言葉に対して持っている常識・固定概念を敢えてくつがえし、そこから解決の糸口を見つけるという発想の大転換を促すことを目指しています。そうすることで、これまで見えてこなかったものが見えるようになり、到底解決できないように思われた組織運営の問題を、みなさん自身の手で解決することができるようになります。
理解を進めるために、私のこれまでの経験や、さまざまな実例を取り上げながら説明していきますが、大事なことは「私の経験」を「みなさんの問題」に当てはめて解決することではありません。そうではなく、私が示す発想の大転換をみなさんにも試していただきたいのです。
「発想の大転換」
それがこの本のキーワードです。ぜひ、これまで持っていた組織運営やリーダーシップに対する固定概念を捨て去る気持ちで、この本を読み進めてもらえればと思います。


目次

第一章 会社においてリーダーシップを発揮しながら適切に組織運営を行うことの難しさ
第二章 ロールプレイングゲームに置き換えてみよう!
第三章 組織ってなんだろう
第四章 会社での行動はリーダーシップになっているのか
第五章 あなたの身近にある組織とは
第六章 二人だけの組織運営
第七章 数人の組織運営
第八章 身近な組織の運営における成功体験をイメージ化する
第九章 誰でもリーダーシップを発揮していたという発想の大転換
第一〇章 会社でも同じことをやってみよう!
第一一章 会社と家族との違い
第一二章 解その一~会社組織という強敵には複合攻撃が有効
第一三章 コーラスサークル(合唱団)における団長としての経験
第一四章 解その二~相手と同じベクトルを向くこと
第一五章 解その三~それでもダメなときの、最後の手段
第一六章 まとめ~組織運営とリーダーシップ発揮に必要な八か条の法則
第一七章 おわりに~組織運営は怖くない。あなたも今日から頼れるリーダーだ!


第一章 会社においてリーダーシップを発揮しながら適切に組織運営を行うことの難しさ

どの会社でもある程度経験を積むと、管理職とよばれるポジションにつくことが多いかと思います。それまでは会社という組織全体のことをそれほど意識してこなかった人も、チームリーダーや課長などの管理職になると、組織運営やリーダーシップについて真剣に考え始める場合が多いのではないでしょうか。
ただ同時に、リーダーシップを発揮し、適切な組織運営を行うことがいかに難しいかを感じる場合も多いと思います。とくに第一線でバリバリ仕事をこなしてきた人ほど、今までは自分一人で営業成績を上げることだけを考えていればよかったのに、管理職になった途端に、部下をうまく活用しつつ部門の利益最大化を求められるようになり、どうしたらいいか悩んでいるのではないでしょうか。
一部の公益法人を除く多くの会社では、利益を上げることが至上命題であり、そのために我々従業員はなんらかのノルマを課されて働いています。そうなると、会社組織では必然的に「営業成績を上げなくてはならない」だとか、「上司の命令を絶対守らないといけない」といった厳しい規律が働くようになり、また、お互いの利害関係や人間関係も複雑に絡み合います。

組織運営に行き詰まると、つい簡単に実践できるハウツーに頼りたくなってしまうのですが、会社のような複雑な組織において、「こうすべき」というハウツーを並べても、単なる理想論・抽象論で終わってしまうか、自分自身の問題解決には役立たない場合がほとんどです。


第二章 ロールプレイングゲームに置き換えてみよう!

ゲーム好きの方であれば、このような例えに置き換えると理解が進むのではないでしょうか。
ロールプレイングゲームの主人公であるあなたは、いろいろなタスクを解決しながら次の目的地を目指していましたが、訪れた洞窟で突如強いボスキャラに遭遇し、あっという間に全滅させられてしまいました。そんなとき、あなたならどうするでしょうか?同じ状態で再度戦いを挑みますか?もしくは攻略本に「敵は火の属性の魔法に弱い」と書いてあったので、火の魔法で攻撃してみますか?いずれにしても、すぐにまたやられてしまうのがオチでしょう。

会社というのは、攻略するのがとても難しいボスキャラだと考えてみてください。そして管理職になった途端、組織運営に行き詰まってしまったということは、レベルが十分でないのに、突如強いボスキャラと戦うことになってしまった勇者たちだとイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。そういうときに、がむしゃらに戦いを挑んでも、またハウツー本のような攻略本に頼っても、いい結果は生まれないでしょう。必要なのは、ボスキャラを倒せるようになるまでレベルを上げ、装備を整えてから再度戦いに臨むことです。

こう言うと、みなさんの中には、
「自分は十分な下積み経験を積んだし、それを会社も認めたから自分を管理職に昇格させたのではないか」
と思う方がおられるかもしれません。その考えは間違っていませんし、あなたが優秀だったからこそ、上層部はあなたを幹部社員に抜擢したのでしょう。ただ、歴戦の勇者でも突如現れたボスキャラに全滅させられることがあるように、会社というのはときにあなたを能力以上に働かせようとするのです。それに応えられるうちはいいのですが、いつか無理がたたって、心身を壊してしまっては元も子もありません。まずはボスキャラを攻略するため、地道にレベルアップをしていくことが得策といえます。

では、組織運営やリーダーシップ発揮のためのレベルアップの方法とは何でしょうか。どんなロールプレイングゲームでも、ザコキャラをたくさん倒すことでレベルが上がります。同じように、いきなり会社という難しい組織における課題解決を考えるのではなく、もっと課題を簡易化すべきでしょう。
手始めに、この本のテーマである「組織」や「リーダーシップ」という言葉の意味から探っていきましょう。やや退屈に感じるかもしれませんが、本書の結論に至る重要な部分ですので、しっかり読んでください。


第三章 組織ってなんだろう

みなさんは「組織」という言葉の意味を正確に言い表すことができますか?辞書をひくと、「組織」という単語の意味はこう書かれています。

「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団」(出典 goo辞書)

ちょっと難しい表現もありますが、「一定の共通目標を達成するため」の集団というのは、しっくりくるのではないでしょうか。会社は利益追求という一つの共通目標を達成するために集まった団体です。人によっては自己実現のためとか、お金のために働いているという人もいるかもしれませんが、会社全体としては、まず利益追求を共通の目標にしておかないと、従業員に給与も支払えませんし、みなさんの自己実現も満たすことはできないでしょう。
話がやや横道にそれましたが、組織は共通目標を達成するために存在しているということを頭に入れておいてください。

それから、「役割や機能が分化・統合されている」とありますが、これはどういうことでしょうか。会社では各部に部長がいて、いくつかの課があり、その下に場合によっては係があります。そして、それぞれの課には決められた役割があって課長がその責任を負っています。これは会社組織が部や課というそれぞれの役割によって分化されているということです。そして、各部は最終的に株主総会を筆頭とする会社組織の下に再度統合されます。
つまり、
「組織というのは、その役割に応じて細かく分けられ、最終的に一つにまとまったものである」
ここではそのように理解しておいてください。

では次に、「リーダーシップ」という言葉の意味について考えてみましょう。


第四章 会社での行動はリーダーシップになっているのか

「リーダーシップ」について辞書をひくと、次のように書かれています。

「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」(出典 goo辞書)

これもいくつかのキーワードを確認しておきましょう。
一つは「自己の理念や価値観」に基づいているということ。
それから「魅力ある目標を設定」しているということ。
そして、「人々の意欲を高め成長」させているということです。

これだけ見ると当たり前のことを言っているように思えますが、少し注意すべき点があります。それは、会社組織におけるリーダーシップといったときに、はたしてこの三点がすべて網羅されているかということです。たとえばあなたが部門のリーダーに任命され、部下を育成することになったとしましょう。または、部門として営業ノルマを課されている場合でも結構です。こういうとき、上司や会社からは、
「部門長としてリーダーシップを発揮して頑張ってもらいたい」
という趣旨の要請やコメントを受ける場合がありますが、これは、はたして本当のリーダーシップといえるのでしょうか。単に上司から命令されて課題や障害を解決しようとしているだけであれば、自己の理念や価値観に基づいて、人々の意欲を高めながら成長させている行動にはなりません。
会社で上司に言われるがまま、ノルマをこなすために部下を使おうとする行動は、リーダーシップとはよべません。もう少し言うと、会社組織におけるリーダーシップの発揮には、さらに一歩踏み込んだ応用動作が必要となるのです。会社でのリーダーシップのありかたという課題解決には応用動作が必要ということであれば、それに挑戦する前に、もっと簡単な視点からリーダーシップの発揮法を考えたほうがいいでしょう。

そのために次の章では会社よりも、もっと身近にある組織について考えてみます。


第五章 あなたの身近にある組織とは

組織と聞くと、組織運営だとか、効率的な組織体制だとか、どうしても会社につなげて考えてしまう場合が多いと思います。とくにビジネスパーソンの方は、そういう意識が強いでしょう。でも本当にそうでしょうか?先ほどの辞書には、「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団」とありました。この定義を満たせば、会社以外にも組織とよべるものがありそうな気がしませんか?

たとえば学校の部活動はどうでしょうか?
運動部はとくに分かりやすいですね。大会で優勝するという共通目標達成のために、監督や各ポジションの選手、控え部員やマネージャーなどがいます。これは一つの立派な組織といえるでしょう。
似たようなものに、社会人サークルがあります。後ほど詳しく述べますが、私はコーラスサークル(合唱団)で団長を務めています。このサークルは、年一回演奏会を開催するという共通目標達成のために存在しており、団員はソプラノやテノールというパートに分かれて一つの歌を歌い、それをまとめるために指揮者が指揮をして、ピアニストはピアノを弾きます。また、会計や庶務などの事務仕事はそれぞれ団員が分担しており、役割や機能が分化・統合された組織とよべるでしょう。
それ以外にも、いつも集まる女子会も「楽しくお話をする」という共通目標を達成するための立派な組織ですし(お店の予約を取る人がいて、おしゃべりを盛り上げる人がいて…と役割も分担されていますよね)、マンションの管理組合だって組織とよべるでしょう。
組織という言葉がやや難しい印象を与えているため、そうよぶのに抵抗があるだけで、共通の目標があり、役割を分担している人たちが二人以上集まった団体であれば、それらはすべて組織とよべるのです。

ここまで読んできて、部活動やサークル以外に、もっと身近に組織があると気づいた人はいないでしょうか?世の中のほとんどすべての人が一生に一度は所属することになる組織、それは「家族」です。
こんなことを言うと、
「何を突拍子もないことを!」
と思われるかもしれません。でも先ほど引用した辞書の意味をもう一度思い出してみてください。組織とは「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団」ということでした。家族に置き換えると、こんなふうに考えられないでしょうか。

◆ 一定の共通目標を達成する = 家族みんなが健康で幸せに暮らすことを共通の目標としている
◆ 成員間の役割や機能が分化・統合されている = 父親は仕事をしてお金を稼ぎ、母親は子どもを育て家事をする、そして子どもはしっかり勉強して健やかに育つという形で役割や機能が分化されており、家族全員が一緒に暮らすという形で統合されている

もちろん、これはモデルケースであり、まったく違う状況の家族もありますが、総じていえば家族も組織としての成立要件を満たしていることになります。

さて、あなたの身の回りには会社以外にも組織とよべるものがあることが分かりました。ここまでの作業は組織を会社という枠組みから切り離すためのものです。つまり組織の実態を簡易化し、より身近で親しみやすいものにするための作業でした。

では次に、みなさんがそのような身近にある組織をどのように運営しているかを考えてみましょう。「運営」というと、これまた難しく聞こえるかもしれません。簡単にいえば、家族や友だちとどのようにつきあっているかということです。そして、「相手とうまくつきあえた=その組織をうまく運営できた」という事例を思い出してもらいたいのです。もちろん、いつもうまくいっているとは限らないでしょう。奥さんとの関係を構築できず、離婚してしまった人もいるかもしれませんし、友だちが少ないという人もいると思います。でも、これまでの人生を振り返って、相手とうまくつきあえたと思える経験を何か一つでもいいので思い出してもらいたいのです。
これは、本書の冒頭で申し上げた「発想の大転換」につながる大事な作業です。作業のヒントとなるような事例を次の章からいくつかご紹介していきますので、ぜひこれらを参考に、ご自分の過去を振り返ってみてください。


第六章 二人だけの組織運営

これまで述べてきたように、あなたの身近に組織とよべるものはたくさんあります。別に人数の上限・下限は関係ありません。極端な話、二人きりでも共通目標があり、役割が分化・統合されていれば組織になるのです。たとえばこのような例です。

【例一】 恋人と過ごす時間
あなたは恋人と今度の日曜日、デートに出かける約束をしました。デートコースを決めるにあたって、あなたは水族館を見てから午後はボーリングをして、夜景が見えるレストランで食事をしようと彼女に打診しました。
でも、返事の様子から彼女はボーリングに乗り気でないみたいです。あなたはその様子や最近仕事が忙しいと言っていた彼女の体調を推しはかって、午後はゆっくりランチを食べて水族館付近の公園を散歩するというスケジュールに変更しました。彼女はそんなあなたの心づかいをたいへん喜び、その日は終日楽しく過ごすことができました。

どこにでもあるような恋人との日常の一コマですが、組織運営に置き換えてみると重要な視点が見えてきます。あなたは相手の状況を推しはかって余裕のあるスケジュールに変更したわけですが、これは「デートを楽しく過ごし、恋人と良好な関係を構築する」という、この組織(=恋人同士)の共通目標達成に大きな役割を果たしました。もし仮に、あなたが自分のやり方を強引に押し通してボーリングに行ったら、その場でケンカ別れしていたかもしれません。たとえその日は何ごともなく過ごせたとしても、彼女はあなたを「私のことをよく理解してくれない人」と思うのではないでしょうか。そうなることを避け、彼女と良好な関係を維持できたというのは、あなたの組織運営の方法が成功したといえるわけです。

理解を深めるために、そのほかにも例をあげてみましょう。

【例二】 親と過ごす時間
あなたは久々に帰省しました。年老いた母親は一人で暮らしていて、想像したよりずっと弱っているようでした。そんな母親を見て心配になったあなたは、その日以降、毎日一回は実家に電話をかけ、母親の様子を聞いたり、彼女の無駄話につきあったりしました。時間にすれば数分でしたが、母親は喜んでいるようで、少しずつ元気を取り戻しました。

これもよくありがちな親子の対話ですが、組織運営という視点で考えると、「母親が元気で長生きする」という目標達成のために、あなたは毎日母親と話すという選択をし、そのコミュニケーションがいい結果を生んだといえるでしょう。


第七章 数人の組織運営

次に家族や友人グループなど、数人で構成される組織の例で考えてみましょう。

【例三】 家族と過ごす時間
思春期の息子が最近黙りがちで、休日は部屋にこもったきりです。会うのは朝だけで、しかも挨拶はなく、食事も満足にとらずに出かけてしまいます。あなたは奥さんと相談し、重苦しい雰囲気を少しでも改善しようと努めました。廊下ですれ違うとき、あなたから一言「おはよう」と声をかけるようにし、奥さんは彼が幼少期に大好物だった卵焼きを毎朝食卓に並べて食べるようにすすめたのです。初めは何も言わず、卵焼きに手をつけなかった息子も、一か月くらいするとポツリと挨拶してから卵焼きをもぐもぐと食べるようになり、半年後には彼から挨拶をするくらいまでに関係が改善しました。

どうでしょうか?家族という組織において、あなたの挨拶や奥さんの努力が、長い時間をかけて組織活性化につながったいい例ではないでしょうか。

【例四】 友人グループと過ごす時間
友人数名とバーベキューキャンプに行くことになりました。キャンプが初めてで慣れない人もいたのですが、あなたは車を持っているAさんには車の運転を、キャンプ常連のBさんには道具一式の調達を、女性のCさんには現地での調理を依頼し、みんなで楽しくバーベキューキャンプができました。

勘のいい人はすでに気づいているかもしれません。この友人グループは、「キャンプの成功」という目標のために、お互いに助け合い、協力してそれを達成しました。まさに組織内で共通目標を達成するために、みんなで役割を分担して、力を合わせた結果といえるでしょう。


第八章 身近な組織の運営における成功体験をイメージ化する

ここにあげた四つの事例はいずれも、身近な人との関係ではありがちな話です。あなたの身の回りでも、よく考えれば似たような事例を思いつくのではないでしょうか。大切なことは、「あなたの身近な体験」として何か一つでもいいので、過去うまくいったこと、言い換えれば「成功体験」を思い出してほしいのです。たとえば、友人とケンカをしたけれど仲直りしたこととか、好きな人に告白してつきあえるようになったこと、演劇部の裏方として発表会を成功に導いたことなど、どんな思い出でも構いません。「共通の目標のために集まった二人以上の集団」で自らの行動によりうまくいったことを、「成功体験」として思い出し、その理由をイメージ化してもらいたいのです。

あなたが謝ったために、ケンカした後に仲直りできたのであれば、それは「相手と長期的に良好な関係を築く」という目標のために、「まずは自分が一歩譲って相手と話しあう」アクションを取ったことが、組織運営の成功につながったといえるでしょう。
あなたがデートを重ねて相手から好意を抱かれるようになった結果、告白が成功したのであれば、それは「憎からず思っている人同士が恋人になる」という目標達成のために、「あなたが上手なコミュニケーションを心がけた」ことになるでしょう。
演劇部での発表会の成功という目標達成のために、あなたは裏方に徹したわけですが、仮にあなたに協調性がなく、主役を演じることにこだわっていたら、発表会の成功はなかったかもしれません。

ぜひこれらの例を参考にご自身の経験を振り返って、身近な組織で運営が成功した体験とその理由を思い起こしてみてください。
どうでしょうか?このような成功体験の理由づけは、実はあなた自身がこれまで組織運営においてリーダーシップを発揮できていたということなのではないでしょうか。


第九章 誰でもリーダーシップを発揮していたという発想の大転換

リーダーシップとは「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」という意味でしたね。
先ほどの【例一】「恋人と過ごす時間」であれば、彼女とのデートにおいてあなたが取った行動(=午後のスケジュールを彼女の体調に合わせて変えたこと)は、「彼女と恋人関係を継続したい」という自己の理念や価値観に基づいて、「いい思い出を作る」という魅力的な目標を設定し、「無理なく楽しくデートできるように」彼女の意欲を高めながら、「スケジュール変更」という形で課題や障害を解決したわけですから、立派にリーダーシップを発揮したことになります。
リーダーシップという言葉が難しいイメージを植えつけてしまっているのですが、要は身近な組織において、あなたが相手を思いやり、いい関係を築こうとして起こした行動の多くは、リーダーシップを発揮したものとなっているのです。

私が申し上げた発想の大転換とはこういうことです。組織運営やリーダーシップという言葉が先行すると、非常に難しいことをやらないといけないように感じます。それが仕事に関係するものならなおさらで、あなたの会社の上司も、書店に並ぶビジネス書もやたら難しい言葉を用いたり、高いハードルを設定したりしているのですが、ものごとを難しく考えていいことは何もありません。なるべく簡単に考えましょう。
身近な組織において運営の成功体験やリーダーシップの発揮経験をイメージ化するというのは、ロールプレイングゲームでいえば、ザコキャラを倒してレベルを上げる行為に似ています。「会社でリーダーシップを発揮する方法を考えなくてはならない」という発想を転換し、まず、身近な組織ではあなたもリーダーシップを発揮しながら、運営ができているのだという成功体験を認識することこそ、みなさんが最初にやらなければいけない作業なのです。

少しはイメージが湧きましたか?私が申し上げたことをこじつけのように思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは裏を返せばみなさんは普段から意識することなく、リーダーシップを発揮できているということなのです。そうやって自然にできていることを、「自分はできているのだ」と認識してあげるだけでいいのです。
身近な組織を運営した体験、そこでリーダーシップを発揮したという認識、これがきわめて重要になるのです。


第一〇章 会社でも同じことをやってみよう!

さて、ここまで来れば会社における適切な組織運営法と、リーダーシップの発揮法を習得する道のりは半分以上クリアしたと言って過言ではありません。この後の作業で必要なのは、前章で述べた身近な組織における適切な運営やリーダーシップを発揮した行為を、会社でも同じようにやってあげることです。
何か目新しいことや奇抜な行動をする必要はまったくありません。あなたが普段身近な組織において蓄積してきたノウハウを、そのまま仕事にも活かしてあげればいいのです。理解を進めるために、これまであげた例を会社組織における行動と結びつけてみましょう。

【例一】 恋人と過ごす時間
例一であなたは恋人の体調を思いやって、余裕のあるデートスケジュールを立てました。一方会社ではどうでしょうか?あなたは営業成績の悪い部下に同じように接することができているでしょうか。いたずらに部下を叱りつけ、ノルマをこなすように強制し、相手がどんな気持ちでいるのか無視していないでしょうか。もう少し余裕を持った営業方法を考案するなど、改善の余地があるかもしれません。

【例二】 親と過ごす時間
例二では、遠くに住む親と頻繁にコミュニケーションを取ることの大切さを述べました。継続的なコミュニケーションが組織活性化につながるというのはよく言われていることです。あまり難しく考えずに、部下に対して毎日少しの時間でいいので、雑談を交わすくらいの気持ちの余裕が持てればいいですね。

【例三】 家族と過ごす時間
例三は、家庭内で妻と協力しながら、思春期の息子との関係改善に努めた例です。たとえば、あなたの部下が最近遅刻することが多かったとします。そういったとき、部下と年齢が近い若手社員に状況を話し、さりげなく彼/彼女が遅刻する理由を聞きだしてもらうことはできないでしょうか。年の離れた若い部下と話すのがおっくうだからという理由で、つい変調に気づかないふりをしてしまいますが、自分一人で解決が難しい場合には周囲に協力をあおぐことも一つの作戦なのです。

【例四】 友人グループと過ごす時間
例四では、バーベキューキャンプに行く友人同士がお互いの欠点を補い合い、自分の得意分野を活かしながら、キャンプを楽しむ様子をあげました。どんな仕事も完璧にこなせるスーパーマンのような人はなかなかいません。みな、何かしらの長所や短所を持ち合わせているものです。会社でも、そういう素質をみきわめて適材適所で仕事を与えることがとても重要だと思います。


第一一章 会社と家族との違い

ここまで読まれたみなさんは、「会社における組織運営法やリーダーシップの発揮法といっても、普段日常生活でできていることを同じように実践すればいいだけである」という発想の大転換がだいぶ実感できたことと思います。「日常生活における成功体験を認識する」という形でレベルアップをしてきたあなたには、もう十分会社というボスキャラと戦う力が身についていることでしょう。

とはいえ、どんなロールプレイングゲームでもそうであるように、ボスキャラを倒すには、ザコキャラと違う難しさがあるはずです。みなさんもおそらく、
「そんなことを言われても、家族や友だちとの関係と、職場の人間関係は違うからなあ」
という意見を持っているのではないでしょうか。
では、会社という組織はこれまで考えてきた身近な組織と一体何が違うのでしょうか。この章では、そこを少し詳しく分析してみましょう。簡易化するために、身近な組織=家族として話を進めます。

結論を申し上げると、家族という組織では構成員が血縁関係にあるということです。そして、それは次のような特徴を持ちます。

◆ 相手の考えていることが分かりやすい
◆ 愛情(親愛の情)を持っていることが多い
(友人や恋人は血縁関係ではありませんが、似たような特徴はあると思います)

家族経営の会社ならいざしらず、通常の会社組織ではこういう状況にはなりにくいでしょう。あなたの席の隣に座っている上司や同僚・部下と、社内恋愛でもしていない限り(そんな人が隣に座っていることは稀ですが…)、彼/彼女の考えていることを表情やしぐさから読み取るのは、なかなか難しいことですし、ましてや愛情を持つことも少ないでしょう。
当たり前に思われるかもしれませんが、ここは非常に重要なポイントなので繰り返します。
「相手の考えていることが分からない」、「相手に愛情を感じない」ということは、組織を運営する上で大きなマイナス要素であり、それこそが会社という組織の持つ難しさ、複雑さの根源でもあるのです。

恋人や自分の子どもであれば調子が悪そうなときに、
「無理をしなくていいよ」
という優しい言葉をかけられるのに、部下にはノルマ未達や遅刻を厳しく叱責したり、休みがちな後輩にまったく関心を抱かなかったりします。相手の考えていることが分からないし、分かろうとするほどの愛情も持ち合わせていないのですから当然です。
また、あなたの上司が今月の営業成績のことであなたを怒鳴りつけたとします。そんなとき、あなたは上司にどのような感情を抱くでしょうか?多くの場合、憎しみに似た感情や、「いつか同じ目にあわせてやる」という復讐心が芽生えるのではないでしょうか。それは上司に対して愛情(親愛の情)を持ち合わせていないからです。たとえば、あなたがもし今日遅く帰宅して、奥さんが遅い帰宅をヒステリックに怒ったとしても、「うるさいな」とは思うかもしれませんが、憎しみや復讐心を持つことは少ないはずです。場合によっては、彼女の機嫌を取るために週末、豪華なレストランの食事に誘うかもしれません。

このように、会社組織の構成員が血縁関係にないことは、組織運営という観点からは大きなマイナスとなります。もちろん、会社という組織は利益を上げることが至上命題ですので、家族や友だち感覚で仕事をしていてはどこかに甘えが生じて、経営がうまく立ち行かなくなることがあるでしょう。ただ、
「会社は、家族や友だちとはまったく違うものである」
という考えは、簡単に解決できるはずの組織運営やリーダーシップに関する問題をきわめて難しくしているという側面にも目を向けるべきでしょう。

この点を理解している人は少なく、とくにその職場の雰囲気が悪ければ悪いほど、そういう傾向は強くなります。
「会社は遊びじゃないんだ!」
とか、
「俺は家庭のために仕事をしていると割り切っているよ」
と言う人を見かけたことはありませんか?これらの言葉は裏を返せば、
「会社組織の人間関係は、遊び仲間である友人同士のつながりとは違う」
「仕事と家庭とは切り離して考えているから、仕事仲間は家族ほど大切には思わない」
と言っているようなものです。パソコンやインターネットの普及で、昨今職場での人間関係が希薄になっていることもこれに拍車をかけているように思います。

家族や友人による組織と、会社組織とは違う。いえ、違うと思っている人がたくさんいる。
そのような状況下で、あなたはこれにどう立ち向かえばいいのでしょうか。もっとも重要で、かつもっとも困難な問題です。次章以降でこれに対する解をあげていきます。


以上、ここまでで半分終了です。

本書でこのあとに書かれているのは

第一二章 解その一~会社組織という強敵には複合攻撃が有効
第一三章 コーラスサークル(合唱団)における団長としての経験
第一四章 解その二~相手と同じベクトルを向くこと
第一五章 解その三~それでもダメなときの、最後の手段
第一六章 まとめ~組織運営とリーダーシップ発揮に必要な八か条の法則
第一七章 おわりに~組織運営は怖くない。あなたも今日から頼れるリーダーだ!

となっております。

 


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