傾聴。 話の聞き方が劇的にうまくなる本。絶版本無料公開中。


Contents

まえがき

会話のコツは聞くことだ。おしゃべり上手な人というのは聞き上手のことで、コミュニケーション下手という人は、人の話を聞いてないか、聞いても理解できないかのどちらかだ。
うまく話を聞ければ、劇的にコミュニケーション力は上がる。

本書では、実行に移しやすい聞き方のコツを紹介する。是非、参考にしていただきたい。内容は、どれも難しくないし、一般的なものだ。しかし、ほとんどの人は、本書で紹介されるコツを見て、目からウロコをこぼすに違いない。

上司、部下、同僚、妻、夫、親、子ども、あなたの周りの人たちは、みんな話を聞いてもらいたがってる。あなたが話を聞いてもらいたいのと同じくらい、聞いてもらいたいのだ。
是非、良い聞き方を身につけて、周囲の人たちの話をしっかりと聞いてほしい。そして、それは、そのまま周囲の人への理解が深まるということでもある。相手の真の気持ちがわかるのだ。これほど人間関係を潤沢にするものもない。

本書は実用書であるから、
「ああ、なるほどな」
という部分があったら、是非実行に移していただきたい。読んだだけではもったいないし、意味がない。せっかくお金を出して購入したのだから、全力で活用していただきたい。


聞くときと意見を言うときを明確にわける

相手が話しかけてきたさいに、相手の言いたいことが終わってないのに自分の意見を言ってしまう人がいる。これだと、相手は話のコシを折られたような気がするし、相手の本当に言いたいことが理解できたかわからない。もちろん、会話は続くのだが、これはちゃんとした聞き方とは言えない。

まず、自分は聞き役に徹すると意識しよう。口を挟む場合は、相手の話がしっかりと理解できない場合の質問だけだ。
「どういう意味?」
「いつごろの話?」
「誰と誰が?」
という具合で、話の内容をしっかりと理解するための質問だけにしよう。そして相手が話したいことを言い終えるまでは自分の意見は言わない。相手が話し終わったら、次は、意見を求めてるのか、聞いてほしいだけなのか、よく考えてみよう。
たとえば、女性が愚痴や人の文句を言っているときは、ほとんど意見を求めていない。ただ自分の気持ちを聞いてほしいだけの場合が多い。そのときにしたり顔で、
「相手は変えられないから、自分が変わらなきゃ」
などと、言っても、まったく相手の心に響かない。
相手の欲求は、聞いてほしいだけなのだから、その場合は、あなたの意見はいらない。意見を言わないことは、難しいことなのだが、聞き上手の人をよく見学してもらいたい。意見をほとんど言わないのだ。

話を聞くというのは、相手が何を望んでるかまで理解することだ。アイデアなのか、結論なのか、ただ聞いてほしいだけなのか。


選んで聞かない。

話を聞く場合に相手の話したいことよりも、自分の聞きたいことを優先してしまう人がいる。
たとえば、
「このあいだ渋谷駅で懐かしい人に会ったんだ」
そう話しかけてきた人がいたら、まず間違いなく懐かしい人の話をしたいのだろう。もしかしたら共通の友人なのかもしれない。にもかかわらず、
「あの日、ワールドカップで渋谷駅、混んでたでしょう。どうだった?」
このように、相手の話したいことと違うことを聞いてしまう人がいる。自分の興味を優先してしまっているのだ。
こういう切り返しをされると、コミュニケーションがスムーズにいかない。しかし、話しかけたほうも、聞いてる方も、無意識に話しているので何が原因かわからない。ただ、相手に残る印象は、なんとなく話しにくい人ということになる。
どうだろう。思い出してほしい。このような会話を、あなたはしてないだろうか。一を聞いて10を知るような頭の回転が速いタイプは、この傾向が強いので注意が必要だ。
話を聞くときは、相手がなにを言いたいのか。常にそれを意識すること。自分の興味で質問してコシを折らないこと。
この会話の場合、渋谷駅の話をしたいなら、相手の言いたいことが全部終わって、その話で一通り盛り上がったあとだ。
その後に渋谷駅の話に戻ればいい。覚えてられないかもしれないが、忘れてしまうくらいなら、やはり重要ではないので相手の話のコシを折ることもない。


社長に対するのと、同じように聞く

聞くときの姿勢に注意したい。最近のオフィスでは、みんなパソコンをつかって仕事しているから、人から話しかけられてるときもパソコンから目を離さない人がいる。話を聞きながら、下手すればキーボードを打っている。
さすがにこれでは相手は自分が尊重されているとは感じないだろう。こんな態度では、いくら相手の本当の意図を聞こうとしても、相手が心を閉ざしてしまう。
ベストの話を聞く姿勢は簡単だ。あなたが失礼をしてはいけない人間の話を聞く姿勢を思い浮かべてみよう。たとえば、社長がブラブラっと、あなたの机のそばに来て話しはじめたとき、あなたはパソコンを打ちながら目も見ないで話を聞くだろうか。そうではないだろう。背筋を伸ばして、目を見ながら、あるいは立ち上がって、真剣に話を聞くだろう。その聞き方がベストの聞き方だ。聞く気のある人の聞き方だ。それを誰に対してもやろう。そんなに、真剣に話を聞くあなたの周りには、いつも人が集まることになるだろう。


複雑な話を聞くときのコツ

登場人物が何人もいるような話は、普通に聞いていても、すんなり理解できない。そんな場合は、メモ帳に相関図を書きながら話を聞こう。するとビジュアルで確認しながらなので、理解し間違えることもないし、相手も説明しやすい。業務内容の入り組んだ話も、すぐに表にすることだ。伝え間違いも起こらない。

メモ帳がないとき。たとえば、レストランで食事をしながら話をしているときは、メモ帳がないかもしれないし、メモするほどの内容ではないかもしれない。そんなときはテーブルにあるものをつかおう。紙ナプキンや塩、胡椒、砂糖、コップ、そういったものを使いながら、テーブルの上に相関図を作るのだ。これは面白いし非常に相手の話が理解しやすくなる。

また、これには、コーチングの効果もある。コーチングとは、物事の答えを教えるのではなく、問題を抱えている本人が自分で気がつくように促すコミュニケーションスキルのことだ。相関図を作ることによって、コーチング効果が生まれる。
たとえば、業務の報告で要素が複雑に絡み合ってるとする。それを、紙に、どんどん書き落としていって、相手と一緒に、事実関係があっているかどうか確認する。頭の中だけで考えていたときには見えなかったことが、紙に書いたことによって見えてくる。すると、相手は自分で問題点を話しながらも解決点まで見つけてしまえるのだ。

また、ほかにも紙に書くことが非常に有効な状況がある。
相手が外国人の場合だ。どちらかが、母国語以外の言語を使っている場合、こみいった話は、なかなか正確に伝わらないことがおおい。そんなときに紙に情報を落としこむのは、非常に有効だ。勘違いもなくなる。また、母国語でない場合によく起こるのが、話し手が伝わっているか伝わっていないか不安になって、何度も同じことを別の言い方で話してしまい、話がなかなか進まないという状態だ。これも紙に落としこむことで、伝わっていると確認しながら話すことができるので、スムーズになる。


上司の話を聞く場合

上司から何か話しかけられる場合パターンは3つに分けられる。

一つ目は、仕事の依頼。
一番日常的な業務のやりとりだ。やってほしい仕事があって話しかけてくる。

二つ目は、意見を聞きたい。
現在の状況の情報を知りたかったり、新しいアイデアの有効性の相談だったりするパターンだ。

三つ目は、雑談。
とくに目的はない雑談もあるだろう。サッカーの話とか、野球の話とか、そういったものだ。

それぞれ話を聞くスタンスは変わってくるので、そこを説明しよう。
まず、上司に話しかけられたときに、どのパターンかを見極めよう。仕事の依頼か、意見か、雑談か。特に、依頼と意見は区別が難しいので、聞きながら判断するしかない。また、意見を聞きに来た結果、それが依頼に変わることもある。
まず依頼の場合は、意図をよく確認しよう。これも紙に情報をまとめながら視覚的にも上司と確認した方がいい。次に納期だ。いつまでに必要か。どうして、その時期なのか、次に予算だ。いくらまでなら出せるのか。根拠は。このときに、上司に、様々な条件を詰めてから依頼してもらう必要はない。話しながら、決めていってもいい。業務の意図を理解できれば、諸条件も話しながら決めていけばいい。

次に、意見を聞きたいというパターンだ。要するに相談したいということだ。これも、紙に落としたほうがいいだろう。上司であろうと、コーチングしてもいい。あなたが毎回、紙に落とし込むなら上司は、それを当てにしているかもしれない。考えをまとめるのを手伝ってほしいということだ。是非、一緒にやってあげよう。これは、大抵、楽しい作業だ。

上司は大抵、目的を持って話しかけてくる。依頼の場合も、相談の場合もそうだ。しかし雑談の場合は、とくに目的がないから、聞き手としては、上司が何を求めて話しているのか、少し敏感に聞かなければならない。ただ、上司に対して、パソコンを見ながら対応したりする人もいないだろうから、これは、それほど問題ないだろう。


部下の話を聞く場合

部下の話を聞く場合が一番注意が必要かもしれない。大抵、人の話をぞんざいに聞いてしまう場合は、部下が多い。
まず、聞く姿勢だ。前述したことだが、パソコンを見ながら聞くのはやめてほしい。必ず、相手にヘソを向けて目を見て聞いてほしい。

そして特に気をつけてもらいたいのは、部下が話したいことをしっかりと聞くということだ。部下は、あなたより立場が弱いから、あなたが話のコシを折ると、そちらに流れていってしまう。
「その話はいいですから、今言いたいのはこれです。」
そんなふうにはっきりと言ってくれる部下は、なかなかいない。だから、上司に対してよりも、気を使わなければいけない。もし、部下に話にならない人だと思われたら、その信頼を回復するのは大変だ。
ここで言いたいのは、部下の言うとおりにしろということではないし、部下の意見を認めろということでもない。仕事の内容で認めるべきところは、認めて、ダメな部分は認めないのが正しい。そうではなく、部下の話を理解しろということだ。彼が何を言いたいのか、言わんとしているのか、それを完璧に理解するのだ。確認のために違う言葉で復唱してあげるといい。
「こういう意味で理解はあってるかな」
というようにだ。そのうえで、あなたの考えを語ろう。この順番であれば、的はずれな意見を言ってしまうこともないし、部下としても受け入れやすい。また、あなたの上司がしたように、あなたは自分の部下を相談相手にしてもいいのだ。上司に相談されるというのは、頼りにされているようでうれしいものだ。是非、部下にいろいろなことを相談してみよう。


考えを広げる質問

相手の言いたいことを完全に理解したうえで行う、上級テクニックだ。これは、会話を一回り大きくする技術だ。

オープンクエスチョンを使おう。
オープンクエスチョンとは、「はい、いいえ」で答えられない質問だ。反対はクローズドクエスチョンと言って、「はい、いいえ」で答えられるものだ。

たとえば、新しい販売方法のアイデアを聞いたときに、
「これで売上は増えるか?」
というのは、クローズドクエスチョンだ。これだと考えに、あまり幅がでない。
そこで、オープンクエスチョンを使って、考える幅を増やし、より会話を多面的にして、有効化しようという試みだ。
「どういう人が買うのか?」
「なぜ今なのか」
こういった質問で、急激に深く考えさせるようにする。
オープンクエスチョンのキーワードは、
「なぜ」「どうして」
が、主になる。
5w1hが全てオープンクエスチョンとなるのだが、「どこ」や「いつ」は、事実について話す場合も多く、あまり広がりにくい。


あとがき

さて、聞く技術、あなたは、どのくらい実行していただろうか。本書で紹介したようなことを、ほとんど意識していなかったとしたら、今まで、相手から話しづらい人と思われてきたかもしれない。是非、この機会に、聞き上手になってほしい。

話を聞くということは非常に重要だ。人間は誰だって自分の話を聞いてくれる人が大好きだ。だから、聞き上手になるだけで、上司のあなたへの評価は上がるし、部下のあなたへの尊敬も増す。同僚からも慕われる。家族関係も良くなる。聞き上手になることはメリットがいっぱいだ。

では、あなたが、すばらしい聞き上手人生を歩むことを祈りながら、本書を締めさせていただく。

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