ネットショップの店長さんへ、不公平がリピーターを増やしますよ。 絶版本無料公開中!


Contents

まえがき

ネット通販が生き残るにはリピート利用者を増やさなければならない。新規顧客獲得は非常にコストが高いので、それだけで利益を上げていくことはできないのだ。
赤字で販売するような入り口商品だったり、広告を使って一人数千円のコストをかけて初回購入を促すこともある。それほどのコストをかけて一度だけの購入では企業は生きていけない。
しかし、多くの企業が新規顧客の確保に頭がいっぱいでリピーター育成を蔑ろにしている。
本書では、ネットショップの真の利益源であるリピーターをいかに増やすかを考察した。そして、その結果、店舗が不公平であるほうがリピーターが増えることがわかった。

従来の常識とは異なるかもしれないが、本書で提示するアイデアは、あなたのショップのリピート率を改善するはずだ。


バケツの底に穴があいているから、水がじゃんじゃん漏れている

多くのショップは、新規顧客の獲得と同じレベルの情熱を、常連客の維持に使うことはない。
これが、もっともネットショップの収益を圧迫する原因となる。新規顧客の獲得にはコストが多くかかっていることは、ネットショップを運営している方なら必然的に理解できるはずだ。初回の獲得コストを、初回購入利益でペイできることは、まずないだろう。
たとえば、30万円の広告で100件の売上が立ったとする。客単価が5000円だったら、50万円の売上だ。利益率にもよるが、この取引だけでは黒字にならないビジネスがほとんどだろう。
では、この広告代を支払うのはいったいどこからの利益だろうか。それは自然流入の新規顧客と、既存顧客のはずだ。そして、大抵のショップでは既存顧客から得た利益がもっとも大きなものとなる。
だから、本当は既存顧客への対応を最重要視しなければならない。

もし、あなたの店の利益が既存顧客によるものでなくても、やはり既存顧客への対応を見なおさなければいけない。
せっかく新規顧客という水をショップというバケツに大量に注いでいるのに、水は貯まらず、底にあいた穴からジャバジャバと流れ出ているからだ。もし穴をふさげるとしたら、どれほど利益が出るだろうか。


お店のルールを誰に対しても公平に提供するのは大間違い

このショップの返品交換ルールは、先にお客様に商品を送っていただき状況を確認してから、交換品を送るというものだった。お客様を疑っているわけではないが、実際に壊れていないのに、壊れたと言ってくるお客様が多かったからだ。

今日も、また、電話がなる。「不良品だと思うんですけど。」そういった言葉が電話口に聞こえる。「送ってください」といつも通りに案内をしたのだが、「急ぎで明日には必要だから先に代替品を送ってほしい」という依頼を受けた。しかしショップのルールをお客様に伝え、ルール通りに対応した。

これはあるショップで実際に起こっていたことなのだが、実は、このお客様は数年前から1ヶ月に2回、3回と購入する超常連客だった。お客様にしても、このくらい買っているのだから、少しくらい無理を聞いてくれるかもしれないと思った。しかし、結果的には、ほかのお客様と同じ対応しかしてもらえなかった。仕方なく代替品を近所のお店で購入した。一週間後不良が確認されて交換品がお客様の家に届いた。もはや必要のない交換品を目の当たりにして、お客様は常連であることを止めた。

ここで話したいことは、このショップのルールが、そもそも間違っているとか、不良が多い商品が悪いとか、そうことではない。
「なぜ顧客担当は常連様を特別扱いしなかったのか?」
ということなのだ。
はじめて来たお客様と同じようにルール通りの対応をしてしまったことが、間違いなのだ。そもそも、このショップのルールは1回の取引に対して自社が損をしないように考えられている。1万円のものを購入いただき、不良が出たと問い合わせがあり、交換品を先に送って、実際に商品を返してもらえなかったら大赤字だ。それを防ぐルールだ。
ただ、お客様が常連だった場合前提条件が違う。合計で100万円買ってもらっていて、これからも100万円、200万円と買ってもらえる可能性の高い常連様という前提条件だ。1万円を心配する必要があるだろうか?この取引で1万円損しても、すでに過去の利益で吸収できるだろうし、そもそもが、これだけ継続して利用いただいているお客さまが、悪意のあることをする可能性がどれだけあるだろう。

この場合、このショップに必要だったルーチンがある。常連客を守るために、どうしても必要なルーチンだ。
問い合わせがあったら、そのお客様の過去の購入履歴と問い合わせ履歴を、全て確認するルーチンだ。会員登録のキーとなっているもので検索すれば注文履歴はすぐにわかる。過去の問い合わせはメールアドレスを検索キーにできるだろう。
これは外部のシステムを購入してでも必ず閲覧できるようにするべき情報だ。それで、常連度合いによって対応を変える。

今回のケースだったら、すぐにバイク便で荷物を届けて、問題があるかないか、後日確認するくらいの対応が必要だ。数時間で行ける範囲であれば商品を持って先方に出向いてもいい。その際には正しい使い方も教えられるし不良品も回収できる。
1万円のお客様の対応で、わざわざ自宅まで伺うことはできないが、合計100万円購入いただいているお客様に対してなら、自宅に伺うのも当たり前のことではないだろうか。
ここで、変に公平な意識はいらない。近所の商店をイメージしてもらいたい。常連のお客様には、ごく当たり前に、少しよいサービスをしているだろう。それは、長い間利用いただいている感謝の証なのだし、自分が顧客側だとしても、それがないなら少しさみしいだろう。そういった感覚をネット通販にも持ち込んでほしい。

新規の顧客も、リピーター顧客も、まったく同じ対応を公平にしようと思うなら、あなたの店からは常連顧客は、だんだんといなくなっていく。


常連であるほど、いつかは困らせるときがくる

先ほどの不良品の話ではないが、やはり商取引では確率の問題でトラブルが起きる。それは決して多くないが確率の問題なのでなくなりはしない。間違った商品を送ってしまう、商品が不良だった、運送会社が商品をなくした、そういったことは、どうしても起こる。
そして、繰り返し使い続けている常連さんも、いつかは、そのトラブルに遭遇する。そのときに、ショップの規約どおりの対応しかしないのか、常連さんが困らなくなるまで徹底的に対応するのかで結果は変わる。常連さんもいつかは必ず、トラブルに巻き込まれるから、そのときに期待以上の対応をできるようにいつでも準備をしておこう。それができないと、どうしても常連さんがいなくなっていく。まさに、穴のあいたバケツだ。じゃんじゃん水はこぼれてる。


新規にかけるコストの半分を常連さんに使おう

もちろん新規顧客獲得は重要なのだ。今、常連さんになってくれたお客様も最初は新規顧客で、やはり最初の出会いがないとはじまらない。だから新規顧客獲得のためのコストをゼロにすることはできない。ただ、半分にして、残りの半分を常連顧客のためにつかおう。
新規顧客を獲得するために使っているコストはどんなものがあるか分析してみよう。
入り口商品で使っている送料分の赤字だったり、それを宣伝する広告費だったり、懸賞でメールアドレスを集めているかもしれない。これらは半分にしよう。半分にしたら、新規顧客獲得のスピードが半分になってしまうだろう。しかし、売上増加のスピードが半分になるわけではない。既存顧客の離脱が減るわけだ。ようするにリピート購入が増えるのだ。魅力的な企画ができるなら、新規顧客を追いかけるよりも売上は増えていくはずだ。

ここで既存顧客に対してできる企画を、いくつかあげてみよう。

2回以上購入いただいている方限定のキャンペーンと考えていただきたい。
告知方法はメールマガジンで2回以上購入という条件で絞りこんで配信するとか、商品に紙のチラシで案内を入れるとか。いっそ手書きも面白いかもしれない。

先行発売。
新商品を先に買えるようにする。売り切れてしまうような人気商品の場合有効。

サンプル提供
試食品や、サンプルを提供する。リピート購入につながるような消費財なら、なおさらよい。送料も込みで一つあたり500円くらいかかるかもしれないが、予算の範囲内で購入履歴から見込みのあるお客様を抜き出して送ってみよう。

定期購入セット半年間無料
定期的に必要な商品の定期購入をオススメして、お試し期間を無料で半年間つけるキャンペーン。3ヶ月でも1ヶ月でもいい。習慣化してしまうと人間は、なかなか止められなくなるから、できれば3ヶ月以上がおすすめだ。結構コストはかかるが、そのまま定期購入に移行してもらえるなら非常に効果的だ。購入回数が多いお客様から試してみよう。

ソーシャルメディアへの案内
フェイスブックやツイッターへの案内をしてみる。常連さんなら参加してくれるかもしれない。もちろん、特典は用意したい。登録の先着1000名様は送料無料クーポン進呈などだ。ちなみにフェイスブックで、「いいね!」をお金を出して買う方法があるが、自社に興味の薄い人たちを集めても意味はない。ソーシャルメディアは量よりも濃さだ。常連さんとなら必ず濃い空間を作れるので、コストを使う価値はある。常連さんの、「いいね!」なら一件1000円くらいの価値がある。1000件で100万円。お得意様をつなぎ止めると同時に、ショップの情報発信の中心地を作ることができるのだ。また、お客様からの要望を受け取ることもできる。

逆に、お得意様向けキャンペーンでやらないほうがいいこともある。
簡単に言えば値引きだ。
お得意様限定、期間限定で送料無料のようなことだ。これはやりたくなるかもしれないがよくない。まず、買い控えが起きる。キャンペーンが行われるのを待たれてしまうのだ。しかも常連さんだから、店の送料無料を行うサイクルなどもすぐに見抜かれる。すると、送料無料のときしか買ってもらえなくなる。これはよくない。
同じように、値引きクーポンなどは止めよう。上述したようにフェイスブックの「いいね!」で、1000円引きクーポンなどの、本当の一回だけのキャンペーンなら買い控えは起きない。待ったところでお客様に得はないから買い控えは起きない。1000円引きクーポンが来ても、欲しいものが多ければ、クーポンが来たときだけ買おうとならない。しかし送料無料や値引きだと、そのタイミングを待った場合だけ得するから、待たれてしまうのだ。
安売りを待つことがお客様のインセンティブにならないように注意したい。


具体的なアクションのまとめ

まずは、お客様すべてを公平に扱うことを止めよう。
早速お得意様向けのルールを作ろう。
その意図を社内で共有して、新規顧客獲得以上の熱意をもって、お得意様に対するサービス向上にのぞむ。
もちろん熱意だけでなく、予算の面でも、お得意様を大切にする。そのため今まで使っていた新規顧客獲得コストの半分は、お得意様のために使う予算にする。
常連様に向けての施策を社内で募る。
すぐに対応開始。

これで、あなたのショップの底にあいた穴はふさがり、売上は積み上がっていくはずだ。


あとがき

さて、既存顧客をつなぎ止める方法、より関係を強くする方法を学んでいただけただろうか。
本書に書いてあることは、本当に基本的なことだが、実際には、これができていない企業が非常に多い。市場が成長していて、マーケットが大きければ、バケツに穴があいていても商売が成立するケースもある。しかしネット通販は穴のあいたバケツではうまくいかない。
皆さんの店はすでに日本全国を相手に商売をしてしまっているのだ。実店舗の全国チェーン展開のように、商圏がこれ以上急激に増えるということはない。ネット通販の場合は商圏の急激な拡大は海外進出くらいしかない。そういった急激にマーケットの拡大が望めない世界で戦っている以上、一人一人のお客様は非常に大切だ。しかも日本は人口減少で中長期的にはマーケットが小さくなっていく。普通に考えればお客様は減るばかりだ。だから、せっかく常連となっていただいたお客様は是が非でも大切にしていかなければいけない。新規顧客獲得コストは上がり続けていく。
実はネット通販の新規顧客獲得コストは昔は安かった。新規顧客の一回目の購入で獲得コストを支払えるほどだった。10年前はそういったマーケットだった。今成功している店舗は、その時代に大量に新規顧客を増やし常連化した大量のお客様を抱えている店舗だ。常連から収益を上げ、稼いだ収益を使って新規顧客を獲得する。そういったショップが増えたから新規顧客獲得のコストも上がっている。バケツに穴があいていなければ相対的に新規顧客獲得に大きなコストが使えるようになる。

バケツの穴をふさぐ。水がたまる。その水を使って更に水を入れる。大きなバケツが買える。そういった好循環なのだ。

では、あなたのショップが、よい循環に入ることを祈って本書を終わらせていただく。是非、あなたの大切なお客様たちと、すばらしい関係を築いていただきたい。

また、本書が少しでもあなたにとって価値あるものと感じていただけたなら、是非下部よりシェアいただきたい。